第七話 腐餓鬼(ふがき)
とりあえず実戦形式での火の粉のは有用性は試せたので、俺は新たに覚えたスキル火の玉特攻を試しつつ、レベル上げをするために新たな餓鬼探しを始めた。
で、どーせ試すなら群れに試したいと思い少し移動したあとに、のんべんだらりと渇いた大地を徘徊している餓鬼を見つけた俺は、火の粉を放ち小さな岩影に身を隠しながら、他の餓鬼が集まってくるのを待つ。
しばらくして、火の粉を喰らいのたうちまわる餓鬼に同族の餓鬼が、群がり始める。
数にして5.6体だ。
う~ん。5.6体か~ちょっと少ないなぁ。
俺のレベルが上がったために、餓鬼単体で貰える経験値では、簡単にレベルが上がらなくなっていることに不満を覚えていた俺は、さらに餓鬼の数を増やそうと火だるまになった餓鬼に群がってきた5.6体の餓鬼に向けて、再度火の粉を解き放った。
すると、案の定というべきか、どこからともなく再び現れた餓鬼の群れ7.8体が、火だるまになっている5.6体の餓鬼の群れに群がり始めた。
うんうんいい調子🎵 いい調子🎵
比較的思い通りに数を増やしていく餓鬼たちを見て、俺は満足げに岩影に身を隠しながら頷いていた。
この調子でいってみよ~🎵
俺は調子に乗りまくり、火だるまにした餓鬼をおとりに夢中になって新たな餓鬼を呼び続けた。
そう呼び続けたのだ。
餓鬼が新たに現れなくなるまで。
で、今現在集まりすぎた百体を軽く越える餓鬼たちによる熾烈な食物連鎖(バトルロイヤル)が繰り広げられていた。
あるものは、腕を引きちぎられて喰われ、またあるものは、足や頭に生きたまま喰らいつかれたまま、別個体の餓鬼の顔面に喰らいついていた。
目の前で繰り広げられる熾烈なバトルロイヤルを見て、やっぱこれって、俺のせいだよね。と思い若干引きぎみになりつつも、俺は自ら起こした責任をとるために、俺はイノシシ先生の必殺技、猪突猛進から得た新たなスキルである火の玉特攻を使って、熾烈なバトルロイヤルを繰り広げる巨大な餓鬼の群れに向かって特攻していったのだった。
結果的に言えば、猪突猛進から生まれた俺の新スキルである火の玉特攻は、百を軽く越える餓鬼の群れをあっさりと、火に包んだ。
ただ少し疑問に思うのは、これだけの数の餓鬼を火だるまにしたにもかかわらず、俺のレベルが2しか上がらなかったことだ。
いくらなんでも、百を軽く越える数の餓鬼の群れを焼き付くしたのだ。その経験値は百を軽く越えるだろうし、いくらレベルが高くなっているといっても、その経験値によって上がるレベルがたったの2で止まるはずがなかったからだ。
俺がこの奇怪な現象に頭を悩ませていると、俺に向かって2.3才ほどの小さな子供ぐらいの大きさをした岩が、吹き飛んできた。
俺はチートスキルっぽいスキル『物理無効』を有しているから、小さな子供ぐらいの岩ごとき喰らっても問題なかったのだが、前世の経験によるものか、反射的にかわしていた。
もちろん物理無効をもっているとはいっても、飛んでくる岩が巻き起こした風圧は無効にはならなかったらしく、ほんの少しではあるが、俺は身体を揺らされていた。
なんだ⁉
俺は自分の身体を揺らめかせた岩をぶん投げてきた物の正体を見極めようと、岩の投げつけられた方向へと視線を向ける。
そこには、数多の餓鬼の死骸を貪りながら、こちらを睨みつけてくる身長2メートルを超える腹のでっぷりと出た餓鬼を巨大化させたような肉付きのいい鬼がいた。
「ぐあああっ」
俺が鬼のいる方を振り返ると、鬼は怒りの咆哮を吐き出すとともに、俺に向かって走りよってきた。
俺は2メートルを超す巨躯をした鬼が走り寄ってくるあまりの迫力に、腰が引けて逃げることも忘れてその場で体をこわばらせる。
体をこわばらせている俺に対して、鬼は巨大な拳を叩きつけてくる。
俺は体をこわばらせつつも、自分にはとんでもチートスキルである『物理無効』があることを思い出して、鬼の拳が俺に到達するほんの少し前には、冷静さを取り戻していた。
だから俺は鬼の攻撃を真っ正面から受け止めようとしたのだが、何か嫌な予感が一瞬俺の頭をよぎったために、すんでのところで鬼の攻撃をかわしていた。
かわした鬼の拳は、周囲の風を巻き込みながら俺のわきを行き過ぎる。
同時に火の玉である俺の炎に裂けめが入り、俺の体に痛みが走る。
え!?
俺はチートスキルである『物理無効』を持っていたために、鬼の拳の一撃によって自分の体が裂け、あまつさえダメージが入ってくるなどつゆにも思っていなかったために、その場で棒立ちになり、パニック状態に陥ってしまっていた。
なんだなんだなんだ!? いったい何が起こった!?
俺には最強チートスキル『物理無効』がある! だから、鬼の攻撃が俺に通るはずがないんだっだからこれは何かの間違いだ!
俺はそう結論付けて現実逃避すると、鬼の攻撃でダメージが入っているはずがないと思いその場で自分のステータスを呼び出して凝視した。
名前 なし
種族 火の玉族(無機物)
状態 並
レベル 10/10
HP 11/12
MP 0/33
攻撃力 0
防御力 0
素早さ 5
呪力 8+6
耐性
耐火 +18
耐水 -
スキル 火の粉 レベル4
浮遊 レベル3
火の玉特攻 レベル2
特殊スキル 物理無効
特性スキル 燃え移り レベル2
称号 集団殺し
残虐
無慈悲
狡猾
うかつ
装備 なし
やっぱりあの痛みは、俺の妄想なんかじゃなかった。
こいつは、この鬼とかいう奴は、『物理無効』を持っているはずの火の玉の俺にダメージを与えられるんだ。
俺の背筋に悪寒が走った。
どうするどうするどうする!? 俺にダメージを与えられる奴なんて今までいなかった。
というかなんでダメージが入った? ただダメージが入るなら、餓鬼と戦っている間に入っていたはずだ。
だから、鬼が俺にダメージを与えたということは、何らかの理由があるはずだ。
俺は、それを探さなくてはならない。そうしなければたぶん『物理無効』スキルと、燃やす以外にとりえのない火の玉の俺は、この世界での生存競争には勝ち残っていけない。そう本能が訴えかけてきているからだ。
自分にダメージが入っていることを確認した俺は、とりあえず鬼から距離を取ろうと移動を開始するが……俺が逃げようとしているのがわかったのか、鬼が俺を捕まえようと、追いすがりながら先ほどと同じように巨大な拳を使っての攻撃を仕掛けてくる。
もちろんそれでダメージが入ることを俺はすでに知っているので、最大限火の玉の体を鬼の拳から遠ざける。
だが、鬼の攻撃によって発生した風圧によって俺の体は吹き飛ばされると同時に、また俺の体に痛みが走る。
これは……風圧か!? 鬼の拳によって巻き起こる風圧によって俺の体がダメージを受けているんだ。
そう思った俺は再び鬼から距離をとりつつ、鬼に視線を向けて鑑定した。
鬼の鑑定に成功しました。
名前 なし
種族 腐餓鬼(ふがき)
レベル 1
HP65/65
MP0
攻撃力12
防御力0
素早さ3
呪力0
スキル 風圧レベル1
威嚇レベル1
俺を揺らめかせたのは、スキル風圧か。風圧内容は?
説明文が流れる。
スキル風圧物理攻撃に自動上乗せされるスキル。
物理攻撃に×1.1補正。なお0.1ぶんは、物理でなく無機物扱い。
つまり腑餓鬼の風圧は、俺のチートスキルだと思っていた物理無効が通じなかったのだ。
その証拠に先ほど自分のステータスを見た時に、わずか1だが、俺のHPにダメージが入っていたからだ。
というか、ちょっと待て。これって結構やばくね?
そう思った俺は、いったん対策を練るために腐餓鬼から距離を離すために逃走しようとするが……
あっさりと回り込まれて逃げ道を塞がれてしまう。
素早さは俺の方が上回っているはずだがなのに、だ。
くそっどういうことだっなんで俺より素早さで低いやつが俺より早く動けんだよ!? 俺は苛立ち紛れに吐き捨てる。とはいっても、多分だが、腐餓鬼が俺より早く動き俺の退路に回り込むことができている理由は、何となくだが見当がついていた。
先ほど腐餓鬼を鑑定した時に、ステータスに表示されていたスキル威圧だ。スキル威圧は、レベル差や自力差があればあるほど有効で、自分より格下の相手の動きを鈍らせる力を持っている。そのため奴より格下らしい俺の動きに制限がかかり、奴が俺より早く動けているのだろう。
つまり、俺の体が奴に怯えているのだ。そのため火の玉本来の素早さが発揮できずに、俺は腐餓鬼に逃走経路に先回りされてしまっているのだ。
どうする? 今戦っても、さっきの餓鬼のあぶり出しの時に、俺はMPをほぼ使い果たしている。勝ち目よりダメージを受ける確率の方が高い。
にしてもさっきまではこんな奴いなかったはずだっいったいどこから現れやがった❗
悪態をつきつつも、俺の逃走経路をことごとく潰しながら俺に迫ってくる腐餓鬼の攻撃を何とかかわしながら、俺が逃げ道を探すために周辺を見回していると、俺の視界に俺の火の玉特攻によって、火に巻かれたにもかかわらず、生き残っている餓鬼に、ほかの生き残っている餓鬼が喰らいついている姿が目に入ってくる。
火に巻かれながらも共食いを始めた餓鬼は、今の戦闘でレベルが進化レベルに達したのか、体をうごめかせると、腐餓鬼へとその姿を変えた。
マジか!ってことは何かっ俺のピンチは俺が招いたことってわけかよ!
つまり、俺が火の玉特攻と、レベル上げのために、火の粉を使って集めていた餓鬼たちの中に、たまたま、進化まであとわずかだったが個体が混ざっていて、俺の火の玉特攻によって、火に巻かれて瀕死の重傷を負った餓鬼たちが、共食いを始めて、その戦闘による経験値取得によって、餓鬼が風圧や威圧という俺にダメージを与えられるスキルを有した腐餓鬼になったってことかよ!
自業自得じゃねぇか!
俺が吐き捨てるように叫んでいる間にも、未だ俺の火の粉や火の玉特攻によって日に巻かれた餓鬼たちの中に生き残りがいたらしく共食いをはじめ新たな腐餓鬼を生み出していた。
今やその数4体。
くそがっ一体だけでも厳しいってのに四体って、マジかよどうする!?
俺が腐餓鬼たちから何とか逃げおおせる算段を巡らせている間にも、新たに現れた三体の腐餓鬼たちは、自分たち以外でこの場でまともに動いているのが俺だけだと知ると、先ほどから俺に攻撃を仕掛けてくる腐餓鬼に加勢するかのように、集まり始める。
そして、何とかこの場から逃げおおせて体制を整えようとする俺を逃がすまいと、四体の腐餓鬼たちが、2メートルを超す巨体とでっぷりと出た巨大な腹を揺らしながら、俺を取り囲むかのようにして迫ってきていた。
もちろん俺は、なんとか迫りくる腐餓鬼たちから逃げおおせようとするが……四方から徐々に逃げ道を狭められ、さらに実力差の開いた威圧によって、動きを制限されてしまい。完全に逃げ道を塞がれてしまっていた。
そして四体の腐餓鬼に囲まれた俺は、奴らの一体に頭から丸ごと呑み込まれたのだった。
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