第24話 勇者さんちぃーす
海、サカナ、ドロップの三人は、勇者を倒すため、ラッセ村を出てモッコロを目指していた。
そして、新しくドロップが仲間になった訳だが、ドロップには、勇者を追って旅をしていることを、海はうっかり伝えていなかった。それを知らず、海たちの旅に同行するということは、よほど物好きな奴であると思い、確認も込めて、ドロップに質問することにした。
「ドロップ、この旅の目的は知ってるか?」
「...あっ!?そう言えば知りませんでした、教えてください!」
海は、ため息をつき、飽きれ気味に言った。
「はぁ、勇者討伐だ」
「ゆゆゆゆゆゆ、勇者討伐!?」
「そうだ、だから危険だ、今すぐ馬車を降りてラッセ村に帰ることを、おすすめする」
そう言うと海は、ドロップを抱え上げ、馬車から降ろそうとした。
「ちょ、ちょ、ちょ、待ってください、私の扱い雑じゃないですか!?」
「こんなもんだろ」
「降りません、放してください!」
ドロップは、体をジタバタさせ、海の魔の手から逃れた。そして海にドロップキック決める。
「うげぇ!」
「私の意思は、変わりません一緒に旅をしてください」
ドロップは、少し口を膨らませて怒った表情で言った。
「それが、人にものを頼む態度かよ...やれやれ、好きにしろ!」
「はい、そうします」
海は、内心足手まとい二人目が増えて、がっくりしたが、目の保養になるので、いいかなと思う海であった。先ほどのドロップキックの時も、しっかりとスカートの中をのぞいた海であった。
そして、馬車で移動して、一日が立とうとしていた。
海は、馬車を止めて、野営をするためテントを広げていたのだ。そこに、サカナが、話しかけてきた。
「おい、鈴木」
「どうした?」
「いや、随分とドロップ殿と仲がよさそうだなと思って」
「そうか?」
「あぁ、傍から見たらラブラブだな、これは、シャルロッタ様に報告しなければならんな、HAHAHA」
海は、サカナが思い違いをしているので、堂々と否定した。
「いや、サカナ一つ訂正しておこう、僕は別に、やましい思いで仲良くしているのではない」
「じゃあ、どうしてだ?」
「目の保養だ!」
「鈴木、キサマはここで殺しておくべきだな」
そう言い、刀を抜こうとしているサカナを見て、火を起こすために簡易暖炉を、作っていた、ドロップが驚いて近づいてきた。
「ど、どうしたんですか!?」
サカナは、近づいてきたドロップを見て、名案が浮かんだという顔をし、ドロップに海の話を聞くように促した。
「ちょうどいい、ドロップ殿、今の鈴木の言い分を聞いてもらえぬか?」
「え~と、なんですか?」
「はっ!鈴木、本人に直接行ってみろ、言えたら、やましくないと、認めてやる!」
「いいだろう」
「なにっ!?」
海は、真剣な表情で、ドロップに向き直った。
「ドロップ伝えたいことがあるんだ、聞いてくれ」
「な、何ですか?」
海は、意を決して言った。海が真剣な表情になったので、ドロップももじもじし始めた。
「僕は、会話の最中も胸をチラチラ、見ていた、いやむしろガン見していた!僕は、その胸のため...ひぃでぶぅ!」
海が言い終わる前に、ドロップの強烈な拳が飛んできた。
「最悪です...死ねばいいと思います」
ドロップの素晴らしい蔑みの目が、海に突き刺さった。
「期待した、私がバカでした、乙女の純情を返してください!」
「どうですか、ドロップ殿、幻滅したでしょう、これが鈴木の正体です」
サカナは、自慢げに言っていたので、海は、反論した。
「おい、サカナなんかお前ムカつくな、干物にするぞ!」
「なんだと!鈴木、もう一度行ってみろ!」
「あぁ、言ってやる、お前は、干物だ!」
「斬る!」
海は、サカナの地雷を踏んでしまったようだ、サカナは、騎士団見習の時、魔法を自慢しようとしたら、魔法が暴発して自分に、降り注いだのだ、その時に、サカナの体は干物のように、水分がなくなった状態になり、それを見た、同期の騎士が干物と、あだ名をつけたのだ。
そのことを知らない海は、サカナに干物と言い続けた。
サカナが、海を切ろうとしたその時、ドロップは、海とサカナの間に入った。
「待ってください!」
「そこをどけ、ドロップ殿、その変態が斬れないじゃないか!」
「斬らないでください、いくら気持ち悪い変態でも、私にとっては、大切な気持ち悪い変態なんです!」
「ちょっと待とうかドロップ、今、気持ち悪い変態って言った?」
「言いました、事実です」
ドロップが、そう言うと、サカナは剣を収めた。
「そ、そうか...それはすまなかった、気持ち悪い変態の討伐は、別の機会にしよう...」
そう言うと、二人は、野営の準備を再開するため、足早に海の前を去っていった。
「ちょっと、待てお前ら!」
そして、海は、この後、朝まで二人に口をきいてもらえなかったのだ。
次の日、海たちは野営地を発ち、順調に陸路を馬車で移動していた。
海たちは、北に進むにつれ、段々肌寒くなるのを感じていた。モッコロは、聞いた話によると極寒の地である。海は、モッコロが、段々近づいてきたのを実感した。
そして、馬車を走らせること、半日、海たちは、モッコロに臨海する海岸についた。
「うお~寒い!」
海は、素早く王からもらった、豪華客船を海の上に出した。
「うわー、どっ、どっ、どこからそんな物出したんですか!?」
突然現れた、船に驚くドロップであったが、もう慣れてしまったサカナは、寒そうにしながら、跳躍してすぐに船に乗り込んで行った。海もサカナの後を追って、船に乗り込んだ。
「ちょ、待ってください、置いてかないでくださ~い」
海は、このまま寒空の下、置いていってやろうかと思ったが、流石の海も良心が痛んだのか、向かいに行くつもりだった。しかし、機の心配をよそにドロップは、跳躍して、船の上に飛び乗ったのだ。
「よいしょ」
ドロップは、陸から船の高さまで、10メートルは、あるというのにそれを易々と、飛び越えたのだ。海は、前からの疑問点にようやく確信が持てた。
「ドロップ、前から力があるとは思ってたんだが、お前、魔力コントロールできるのか?」
「えっ、できますよ、コントロールだけなら、兄にも負けません!」
「そうか、それなら安心だな」
「ど、どうしてですか?}
「決まってるだろ、もっと強くいじっても大丈夫だということだろ?」
「もう、海さんの意地悪、知りません!」
ドロップは、頬を膨らませて、船内へと入っていった。
海は、あぁ言ったものの、内心ドロップが自衛する手段があることに安心していた。
そして、船をサカナに任せて、海は、甲板に出て、モンスターがいないか見張りをすることにした。
「さすがに寒いな...」
海は、寒さに耐えながら見張りをしたが、北に進むにつれ、だんだん寒くなり、温度は、-10度にもなっていた。
海は、見張りの間暇だったので、釣りをすることにした。森で入手した木で竿を作り、糸はラッセ村であらかじめ貰っておいた物を使い、針は、適当な石を収納で切削した物を使用している。
海は、まぁ釣れないだろうと思いながら、餌を付けて釣り糸を垂らした。
そして10分後、海は、の釣り竿の先端が、反応しているのが分かった。
「おっ、来た来た!」
海は、タイミングを合わせて、竿を引き上げた、すると竿は、勢いしなり折れそうになったのだ。
「これは、大物だ!、うおぉぉぉぉぉ!」
海は、叫び声をあげて釣り上げようとしたが、重すぎて、竿が折れそうになっていた。海は、急いで、竿に魔力を流し込み、竿の強度を上げ、自信も魔力で強化した。
「うおおおおおおおおおおおおおお」
MPがどんどん減っていくのを感じた海は、超回復水を飲みながら、釣り竿を引いた。
そしてついに、獲物は、姿を現した。その獲物は、目視では、全長10メートルは、ありそうな魚だ。海は、最後の力を振り絞り、なんとか、魚を釣り上げた。釣り上げた魚は、大きなナマズのような、魚だった。
「よっしゃ!捌くぞ!」
「ちょ、ちょっと待て!」
魚は、ピチピチ跳ねながら何か言っているような気がしたが、海は、構わず、魚をさばいた。
「ぎょあああああああああ」
魚は、大きな悲鳴を上げたような気がしたが、海は構わず捌いた。
海は、今晩のおかずが増えたことに満足して、魚をアイテムボックスに収納した。
「よし次々、行くぞ!」
海は、その後も魚を釣り続け、合計10匹も魚を釣った。
「大量大量!」
海は、満足気に船内に入った。
そして、晩御飯の時、海たちは、全長10メートルある魚を、塩焼きにして食べた。
「ずいぶん大きいですね、これいったいどうしたんですか?」
疑問に思い、ドロップは、海に質問した。
「そこで釣った」
「そ、そうなんですか」
なぜか動揺しているドロップを見て、海は不思議に思い聞いてみた。
「どうした?」
「いえ、その魚しゃべりませんでしたよね?」
「いや、ぜんぜん」
「はぁ、よかったこの付近は、漁とか釣りとか原則禁止なんですよ」
「なんでだ?」
「えっとですね、海神ポセイドンがいるからです」
「ふぅ~ん」
海は、どうでもよさそうに聞きながら、海神ポセイドンの味を堪能していた、海神ポセイドンは、淡白でとてもおいしい魚だった。
「この魚うまいな、鈴木よくやった!」
サカナも満足げに、食べていた。
「そうですね、美味しいですね…」
三人は、仲良く海神ポセイドンをいただいた。
そして、このあと海たちのステータスには、「神を喰らい者」という称号がついたのだった。
そして次の日、ついに海たちは、目的地である、モッコロにたどり着いたのだ。
モッコロは、海に面しており、船を降りて、直ぐに中に入ることが出来る。海たちは、停泊所で、船から降りて、モッコロの中に入ろうとした、その時、海たちを、引き留める、者がいた。海は、そいつを見て、驚いたが、とりあえず黙っていることにした。
「あなたたちは、何者?」
海たちを引き留めたものは、全身皮の鎧装備で整えた、白銀の髪の美少女だった。
海は、勇者倒しに来た、などと言えないので、適当にごまかすため、旅のものといいうことにしておいた。
「旅のものです」
「えっ、絶対嘘よ!只の旅の者がそんなに強そうなわけないじゃない?」
「いえいえ、弱いですよ」
海は、ドロップのぷよぷよの二の腕をタルンタルンしながら答えた。突然のことで驚いた、ドロップであったが、海の側頭部を殴りつけた。
皮の鎧装備の美少女は、若干ひいていたが、なおも食いついてきた。
「女の方じゃないわよ、あなたよ!」
「僕ですか、気のせいですよ」
「気のせいじゃないわ、私は、そいつが強いか弱いか分かるの!」
「そうかい、ところで君の名前を教えてくれるかい?」
海は、話をそらすため、名前を聞いてみた。
「ふっふ、聞いて驚きなさい、私は、この国の勇者、勇者 鈴木 楓よ」
「うん、知ってた」
海が、追っていた勇者は、海の実の妹だったのだ。
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