マフラーの刺繍

くもり硝子の向うは風の街 

問わず黙りの心が切ないわ 

羽方ひとつの重さもない命

貴方を失ってから…………


白い歯を見せながら

首にマフラー巻いてくれたわね

あたしに返すつもりならば

捨てててば


そうだ 誕生日ならマフラーだよ

そんな言葉が心に渦巻くわ

あれは一月 肌寒い日の中で

誓った愛の証


孤独が嫌いなあたしは

気にかけて戻ってきてよ

気が変わらぬ家に早く

帰ってきて


くもり硝子の向うは風の街

さめた珈琲が残ったテーブルで

襟が乱れた 日暮れの人波に

立ち尽くす貴方を見てた


そして二年の月日が流れ去り

街でチェックのマフラーを見かけると

首にマフラーのハートを探すのよ

着方を失ってから……


そして二年の月日が流れ去り

街でチェックのマフラーを見かけると

首にマフラーのハートを探すのよ

着方を失ってから……

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