亜米利加

「愛してる?」と彼はさりげなく言った

素晴らしい物語は

彼が持ち歩くバックの中


そこで 僕はポール・モール一箱と

『キャリー』を一冊買った

それから 歩いて探しまわった 亜米利加



ねえ キャリー

豚の血を頭からぶっかけられたら

ブチ切れるにきまってんだろう

僕はそっと呟いた

シンデレラなんて たんなるお伽噺とぎばなし

メイン州から四日かかってヒッチハイクしてきた

僕は探しに出てきたんだ 亜米利加



レストランでは笑いながら

店員の顔相手にゲームした

むっちり肥ったあのウェイトレスは

アニー・ウィルクスだ


厨房で黙々と料理を作ってるのは

もしかしたらスティーヴン・キングかも知れない


ここは静寂の街だ

ちょっとでも騒いだら街ぐるみの連中に殺されそうだ

物音をたてないようにして美味いロブスターを食べた


そこで 僕は残り一本の煙草を吸うことにした

僕はペーパーバックを読んでいた

広い宇宙の彼方から石の雨が降るのだろうか



キャリー きみの気持ちがわかったような気がする

もう彼女はいないと知ってたけど 話しかけてみた

念力があればなんでもできるけど 虚しかったかい?


普通の人間などいらなくなった世界

無数のトランプがひらりと舞い散る

みんな探しにやってきたのさ 亜米利加


誰もが求めてやって来る 亜米利加……








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