大切な仲間
わたしはかなりのヘビースモーカーだ
ある日 健康について深刻に考え
みんなの前でキッパリと禁煙宣言した
喫煙所に居たみんなは驚いた
禁煙宣言から ちょうど六時間が経過した
わたしは禁断症状でイライラし始めた
普段はケチくさい奴がこう言った
「ほら、我慢しないで一本吸いなよ」
やさしい声でポンとわたしの肩を叩き
スッと煙草を差し出して にこっと微笑んだ
わたしの銘柄とは違ったが、一瞬だけ美味そうに見えた
「意地を張らないで、遠慮なく吸いなよ」
「いや、男が唾を吐いたら飲めぬわ!」
頑固なわたしはかぶりを振った
「我慢は身体に毒だよ……」
「さあ吸えよ」
「嫌だ!」
「吸え!」「吸え!」「吸え!」「吸え!」
みんなはニヤリとした顔で手拍子をはじめた
どうしてなんだろう?
喫煙者は禁煙宣言した者に対して
平気な顔で こんな意地悪なことをするんだ
きっとこれは何処にでもある光景なのだ
どうしてなんだろう?
わたしは腕組みしながら眉間にしわを寄せた
みんなはまじまじとわたしの顔をみつめる
わたしはふとこう思った――みんなは一緒に時間を共有する、大切な仲間なんだ
「あいつ結局、禁煙失敗したんだってよ!」
みんなに陰口を叩かれて
馬鹿にされ 笑われても
わたしは嬉しい
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