面倒な麺道
麺は細いものに限る。
基本的にはそう思っている。
だからうどんよりはそばを。ひやむぎなんかよりはそうめんを。ラーメンは太麺よりも細麺を好む。
でも世の中、俺と逆の考えの人もいるわけであって、それだからうどんもひやむぎも絶滅せずに生きているわけである。
そばの中にも田舎そばみたいに割と太いものがある。それは嫌いだ。
でも、太い麺にも美味いものがある。讃岐うどんだ。三層になっている麺のあのコシ、うどんなんて風邪や体調不良の時に消化が良いから仕方なく食べるものだと思っていた俺に、革命的ショックを与えてくれた。それから、平打ちのパスタ。ソースによく絡んで美味い。
だから我『麺堂 風間本店』(支店はない)は細打ちのそば、讃岐うどん、平打ちのパスタ、醤油、味噌、塩、豚骨ラーメンで勝負しているのだが、この昼時に客の一人もこない。なぜなんだろう? 値段もリーズナブルだし、麺だって全部手打ちだ。味は言わずもがなだ。うん十年、全国各地の麺を食べ歩いてきた俺だ。舌は肥えている。自慢の味だ。まあ、お客様が来てから麺を打ち出すから、注文から出来上がるのに二時間かかるってのが難と言えば難だな。昼時のランチには向かないかもしれない。しかし、夜は各県の地酒、焼酎、各国のワインなんか取り揃えているんだけどな。まあ、つまみとかないから、ただ酒を飲んで二時間待ってもらうしかないんだけどさ。
あっ、お客様いらっしゃい。何にしますか? いやいや、直接注文じゃなくて、そこのチケット発券機でチケットを買ってください。えっ、ボタンがたくさんあってよくわからない? じゃあ、この注文マニュアル読んで、ボタン操作を覚えてください。なに? 面倒くさいから帰るって! おととい来やがれ! ああ、今日も暇だなあ。自分の賄いでも作るか。二時間かけて……。
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