第4章 輝かしくも楽しい思い出と……別れ (2)
「イモ……?」
「イモ、ですか?」
それを聞いて、ルナはキョトンとして居た。ケイリングも同じ様子だ。
そりゃ、そうだろうなぁ~……自分も未だに、サッパリなんだし。
「何でも……それがいつしか、この国の体を作る新たな体の一部となるだろう……との事で」
アヴァインがそう言葉を付け足すと、ルナはそれで急になにか納得いった顔を見せた。
「ああ、なるほど……それはあの方らしい実に深いお言葉だと思いますよ、アヴァイン」
「はぁ……あの、それは一体??」
「この国の一部となれ……つまりは、アヴァイン。カルロス技師長は、新たなこの国の体の一部に、あなたがなることをお望みだったのではないかしら?」
「私が……ですか?」
「ええ、アヴァイン。あなたならきっとそうなれると思うわ。だから頑張ってね♪」
「はぁ……はい。まあ、そうですね。分かりました。頑張ってみます」
自信は無いし……何をどう頑張れば良いのかっていう方向性すらも、正直なところよく分からないんだけど。
何にせよ、自分の話はここまでにしよう……。
「それよりも……フォスター将軍の件はどうなのです?」
「ええ……」
ルナ様はそこで流石に表情を固くしたが、直ぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
「きっと今回の件、何かの間違いだと私は信じております。あの人はそんな野心家ではなかったですものね?」
「はい。それについては私もその様に思い信じております」
アヴァインは直ぐにそう言った。実際、あのフォスター将軍が……と考えると謀反だなんて信じられないのだ。
そんな思いで強くそう言うと、ルナ様は嬉しげな表情を涙目に見せた。
「……ありがとう、アヴァイン。あなたがそう言ってくれるだけでも、何だか気持ちホッとする」
「あの……」
ケイリングだ。急に緊張した面持ちで、珍しいくらいに真剣で真面目な顔をルナ様に向けている。
「わたしなんかが言っても力ないし。頼りないのでしょうけど……。わたしも、フォスター将軍のこと信じてます!」
びっくりする位、前のめりにそう言い切っていた。
「ありがとう……頼りないとか、そんな事は決してないわ。ケイリングさん、本当にありがとう……感謝します」
ルナ様はそれで感涙し、「お茶を淹れ直しましょう♪」と言って立ち上がりこの場を離れていった。
「え、と……急に、どうしたの? ケイ」
『らしくない』っていうと、アレだけど……ケイリングがルナ様に対してそこまで強く言ってくれるなんて思ってもいなかたった。だからアヴァインは少し驚いていたのだ。
すると、ケイリングは小さくため息をつき言った。
「別に、どうもしないわよ。ただ、さ……」
「ただ、なに?」
「わたしもいつか、同じ立場になる事が『もしも』あったらよ。もしも、あったら……。誰かに、嘘でもいいからさ。そのくらい強い言葉で言って欲しいって、思うんだろうなぁー……って感じたのよ。そう思ったら言わずにはいられなくなったの。たったそれだけの話」
「……そっか」
気は強いし、負けず嫌いで怒りっぽいところはあるけど。ケイリングは本当に気持ちの優しいとても良い娘だ。
アヴァインはそんなケイリングを改めて見つめ、微笑みを向けた。
「ありがとう、ケイ♪」
ケイリングはそれを受けて、顔を真っ赤に染め「別に……」とアヴァインには気づかれない様に窓の外へ顔を向け照れ臭げにしていたのである。
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