第1章 カンタロスの女神(5)

「……それで、カスタトール。お前はカルロス技師長を見て、どう感じた?」


 カルロス技師長と別れ、最高評議会議事堂パレスハレス内を歩きながらも、フォスター将軍は時折周囲の人目を気にしながら、カスタトール将軍に問う機会を伺い。空かさず、真剣な面持ちで口を開き確認していたのだ。


 それに対しカスタトール将軍は重苦しい思案顔だった表情を途端に緩め、軽く肩を竦ませたあと、次に困り顔を見せ頭を掻きながら次第に弱り顔となり口を開く。


「まだなんとも言えませんね。流石に年長者だけあって、本心を隠すのに長けておられる」

「そうか……私はてっきり、あの方も改革派なのだと期待していたのだが……」


「ハハ。少なくとも単純な保守的思想の持ち主ではない、そう思いますよ? 私の目から見た限りは、ですがね」


 カスタトール将軍は肩をすくめながら軽く微笑みそう言った。それをみてフォスター将軍も「そう願いたいよ」と呟き言い、同じ様に微笑み軽く肩をすくめ返す。


 間もなく、将軍とその関係者だけが入ることの許されている控え室へと入り、フォスター将軍とカスタトール将軍は見合う形でソファーに座る。

 この室内は、黄金の装飾で飾られたそれは見事な一室であった。


「アヴァイン。すまないが、お茶を淹れてくれ」

「はい」

 アヴァインと呼ばれた赤髪で端正な顔立ちの若き青年は、そこで人懐っこい表情を見せた。

 彼はフォスター将軍に仕える副官の一人で、年齢は十九歳。その地位としては十分に若手といえる。前回の大戦中に、机上戦略ながらもたまたま狙いが当たった……というのが実の所だったが。それ以来、フォスター将軍とカスタトール将軍両名から気に入られ、小さな紛争などに呼ばれては参戦し、幸運にも微細ながら兵士の運用術などといった経験を積ませて貰っている。

 しかし、自分の実力以上にこの二人からは評価されているようで、彼としては正直なところ参いっている。

 今もこちらをフォスター将軍が横目で何やら期待した様な表情を浮かべ、頬杖をつきながら様子を覗いジッと見つめていた。


 これには内心、ため息だよ……。


 今この室内には、フォスター、カスタトールの両将軍。そして彼の三人だけが居る。出口には、もう一人の副官が兵士二人と共に見張りに立っていた。


「アヴァイン……。お前の目から見て、カルロス技師長はどのように映った?」

「はい?」


「お前なりに、何か意見があるのなら、一ついつもの調子で聞かせてはくれないか?」

「おお! そいつはいいな」

 お茶を淹れて渡した所で、フォスター将軍から唐突に赤毛の青年アヴァインはそう問われたのだ。間を置かず、隣のカスタトール将軍もそこでポンと手を打ち、こちらを同じ様に期待の表情で見つめている。

 だけど、カスタトール将軍の方は明らかに冷やかしの様なモノが入り混じっているように思われ……正直なところ、これには迷惑さだけが感じられる。


 アヴァインはそんなカスタトール将軍を呆れ顔の半眼で軽く見つめ、フォスター将軍の方を向き困り顔に言った。


「ですが、あのぅ~私などのような者が、科学者会の元老である技師長に対して、なにかモノを言うというのは……そのぅ…あまりにも立場を弁えないというか……アレではないかと……ハ、ハハ♪」


 フォスターは、目を泳がせながらそのように言うアヴァインを遠目に見つめ軽く苦笑し、次に頬杖をつき言う。

「まあいいから、ホラ。正直なところを素直に言え! お前はとにかく勘だけは良いし、無駄に口の回る奴だからなぁ~、参考くらいにはなる。

心配しなくても、このことは決して口外しないさ。なぁあ~? カスタトール」

「ああ。お前の率直な感想をひとつ、聞かせてくれ! 我々とはまた見識の異なる立場の者からの意見を、今は聞きたい心境なんだ」


 両将軍が愉しげにそんなことを言っている。

 だけどこちらとしては、実に迷惑というか……。


「あのぅ~……どうしても?」

「ああ、どうしてもだ」


「絶対に?」

「いや、『絶対に嫌だ』というのなら、無理強いはしないが……」


「……」

 フォスター将軍のその言葉と真剣な表情を目にし、アヴァインは思わずそこでため息をつく。

 何の彼の言っても、普段大変お世話になっている両将軍だ。カスタトール将軍も困った性格的側面がありはするものの、いざという時にはとても頼りになる大人物で、その実力だけは認め尊敬すらしている。

 そもそもこの年齢にして副官になれたのは、この両将軍の尽力あってのことであり。そういった理由から、どうにも心理的に逆らえきれないところがあった。


「わかりました……それでは申し上げます。だけど絶対に、この事は誰にも口外しないでくださいよ?」

「ああ、ハッハ! わかってる、分かっているよ♪ お前も意外と心配性なやつだなぁ~」


「そりゃあ……だって…」

 冗談でも他の者に知られたら、左遷され兼ねない内容だからなぁ、コレは。堪らないよ。


「まあ~大丈夫だ。それとも俺たちを信じられないのかぁ? アヴァイン」

「あ、いえ! そんなコトは……」

 そう言われると……流石に答えない訳にもいかなくなる訳で…。


 アヴァインは再び仕方無げに吐息をつき、口を開いた。


「はぁ……わかりましたよ。それじゃあ、言いますよ?」

「ああ、ハハ。よろしく頼むよ♪」

「いいから早く言え。が、出来るだけ簡潔に頼むぞ、アヴァイン♪」


 か、簡潔に、って……。

 ホント勝手なモンだよなぁ~……。 

 

 アヴァインは困り顔に再びため息をつく。


「はい、わかりました。言いますよ。

えー……私の家は商家で、それもあまり裕福な方ではなかったのはご存知でしょうか?」

「ああ……そうだったな…」

「おい、まさかのそこからか?」


「はい。まさかのここからですよ……。

そうした貧しい経済環境の最中、私の父親は十五歳の時に他界し。母も幼少の頃には既に亡くし他に頼る者も居ない私は、あと一年で卒業出来たセントラル科学アカデミーを中退せざるを得ませんでした。

今ではフォスター将軍に拾って頂き、随分と助かって居りますが。これでもそれなりに苦労をしてきたつもりです。

と言っても……世間一般の者からすれば、自分なんてまだまだ苦労した内にも入らないだろうなと正直いって思いますけどね。

ですが、そんな私から観ても先月のカルロス技師長の発言は『一般庶民の感情を蔑にした、許されないものではなかっただろうか?』と感じられるほど、衝撃的なモノでした。

事実、多くのキルバレス国民から反発の声が上がりましたよね?」



 カルロス技師長に対して、アヴァインは決して悪い印象は持っていない。今現在に至っても。だけど前回の発言に対しては、彼なりに深く疑問を抱くところがある。

 でも流石にここまで言ったあとで、『ちょっと流石に今の言葉は、辛辣過ぎたかな?』と思わず不安になってしまう。

 が、両将軍とも驚いた表情で目を見開きながらも、こちらを興味深そうに聞き入っていたので。そこでホッと胸をなで下ろし、アヴァインは話を続けることにした。



「今日初めてお会いし話した時に感じたあのカルロス技師長の印象は、そうした経緯から受ける印象のものとは掛け離れ、寧ろ真逆で自分も安心しています。ですから、もしかすると詳細な中身については何かしらの誤解があった可能性は十分に有り得るかと。

しかし……技師長が幾ら正論に思われる様なことを独り唱えようと。少なくともこの共和制キルバレス国内では、数による意見が多数を占める場合には、どんなに筋の通った道理も、残念なことですが通らないのが常であり、現実というモノで……」



 そこで話を一旦切り、肩を竦め見せたあと軽く溜息をつく。

 両将軍もそれには同じく肩を竦め、納得顔を見せていた。


 そんな両将軍の反応を確かめみて、それからまた直ぐに話を繋げる。



「というのも、多少嫌な言い方・見方となりますが……少数の知識賢人が考える偏屈で多くの者が理解出来ない意見よりも、多様的価値観から成る、より多くの者が感じ・理解と同意を得て初めて《ヨシ》とする。

つまりは、国民の《平均をこそ常》とし、政治に多く取り入れてゆく――。

数による大多数の意見、それこそが民主共和制の大義名文・正義となるからであって。アカデミーでもそう習いましたし。この国の最高評議会はそうした理念から構成されたのだと聞き及びます。

ある意味でこれは、実に愚かにも思える政治体制設計ですが、多民族国家であるが故に取り入れた制度であるとの説明も受けております」


 そこまで言ったあとで再び軽く肩を竦めて見せ、それからまた真剣な表情に戻し、更に繋げた。


「そのことを立証するかの様に、結果として……《最高評議会》は技師長に対し、ある一定の処分を言い渡していますよね? 

実はこの件が同時に、『ある重大な一つの強いメッセージを国民に対し投げかけたのではないか?』と私には思えていて。というのも今回の件は結果として、いやあくまでも見方によってですけど『技師長ほどの立場の人間であったとしても、それが例え《間違った世論》であったとしても、これこそが今後共和制キルバレスが歩むべき・淀む事なき《民主共和体制の本道》である――』と内外に指し示せたことになる訳で。

つまるところ、ここで何が言いたいのかと言うと『――この体制に於いては、《力による不正はあり得ない》のだ――』という強い意志を持ったメッセージを……」


「要するに、『カルロス技師長は、政治的パフォーマンスの見せしめとして、それに利用された可能性がある』と言いたい訳か? アヴァイン」

 頬杖をついたままのフォスター将軍から平素な顔で訪ねられ、アヴァインは思わず困り顔で肩を竦めてみせた。


「いえ、残念ながら自分には、そこまでハッキリとしたことは言い切れないですし、解りません。あくまでも可能性の一つとして、個人的意見を述べてみただけなので」

 フォスター将軍とカスタトール将軍はそこで互いに顔を見合わせ、やはり同じ様に肩を竦め、苦笑いを浮かべている。

「ふむ……」


「あのぅ~、まだ話を続けた方がよろしいのでしょうかぁ?」

「ああ、ハハ。話としてはとても面白いから、このまま続けてくれ」

「お前は相変わらず、興味深い、変わったモノの見方をするヤツだよなぁ。

いいからアヴァイン、さっさと話を続けろ! 聞いてやるから♪」


「……」

 カスタトール将軍の言葉に対し、なんだか不愉快な気分になる。自分はどうにもこの人が苦手だ。『どうせ私は、変わり者ですよ』と思わず刃向かってみたくもなる。


 そんなカスタトール将軍をつい半眼の遠目に見つめ、軽く溜息をついたあと。フォスター将軍の為にと割り切って、ここから先は話すことに決めた。 



「では、続きを……今回の件では残念ながら、そもそも――技師長の発言の中身自体にも、『問題箇所があった』そう思われる所があります。個人的に、ですけど。

え~と……ここからが実は、私個人が感じる技師長に対する感想であり、本題だと思ってください」

「――って! じゃあ、今までの長い話は何だったんだよ?!」


「……」

 カスタトール将軍のそんなツッコミなど無視し、ツンとして話を続けた。


「ここまでの話で大事なのは、一点。『国民感情を無視して、政治は動かせない』という所な訳であって。

確かに、技師長が言ったことはもっともな側面があったと思います。ですが、日々の暮らしだけで手一杯の庶民感情からすれば、時間的余裕もあり本来業務にも関わりのある者が十分に考え対策を取って貰わなくては困るのだと多くの国民は思っていることでしょう。

あの日の技師長の発言は、まるでその責任は庶民である者達にもあるかの様な言い回し方でした。つまり、過失的責任が国にあったとしても、国も国民も同様にその責任を負うべきだ、と。

しかしその日その日を生きることだけで一杯一杯の庶民感情からすれば、そうしたことに労力を割くだけの時間的ゆとりなど端からなく。選択の余地など無いのが実情であることを、同時に認識しておく必要があるのだと自分は思います。

多くの国民の立場からすれば、『その為に多くの血税を国民は預け、その使い道も任せているのだから。それだけの責任をもって、行動して貰わなくては困る』と……そのように考えているのではないかと、自分は思うのですが、如何でしょうか?」

「まあ……それはそうだろうな……」

「ふむ……」


「つまりは、それが無視することの出来ない《世論の一つ》になって来るのだと、自分には思えます。その事に対し、カルロス技師長の認識は、実に甘かったのではないか……。

結論として、この私が考える技師長が犯した最大の問題点は、『国民に対し、大きな誤解を与えた可能性がある』と思われる部分ではなかったか、と」

「誤解? それは例えばどういう事だ、アヴァイン」


「あ、えーと……カルロス技師長は《科学者会》の最高責任者であり元老員で、その発言には多大な影響力がありますよね?

つまり『――国は、自ら犯した故意及び過失的責任部分について如何なる場合に於いても、単独で責任を負うつもりは無い――』といった極論解釈をされた可能性があるのではないか、と……要するに、その損失した費用負担部分を、国民に押しつける。

なにせ国税で賄うのですから、国民の目には結果としてその様に映る訳です。

そして、その業務負担部分を負うのは評議会や役人な訳で、ここは形式的にあくまでも業務の一環として担う。

つまり《国費》で、これも賄う。

一見これは労働報酬として成立し、平等にも思われ正当性があるかにみえますが。事前の過失損失を与えた債務側がどちらにあったか等を含め考えると、その実は《国民に対する二重負担》という側面がここから垣間見ることも可能です。

国民は一定の責任を果たした筈なのに、国を動かしている者達はその責任を十分に果たしたと本当にこれで言い切れるのだろうか?

こういった疑問符が当然、浮上して来ることになるのだと自分には思えます。となれば多くの国民は恐らく、ここの部分に不満を感じるのではないでしょうか?

もちろん、民間がこの政治システムを悪用した場合にも同じ問題が発生するものと予想される訳で……。仮に国民がそのことに気付いた場合、最悪は暴徒化し、下手をすると体制崩壊にも繋がり兼ねません。

……それを思うと、ちょっと怖い。

どちらにせよ、そうした負の連鎖が定着するのは大変に危険なことです。

まあこれもまた一つの極論な訳なんですけどね」


 両将軍はそこで呆れ顔に肩を竦めていた。

 自分も同じく肩を竦め苦笑い、再び話を続ける。


「事実、それを恐れたのか? 最高評議会のカルロス技師長に対する処分は、とても迅速なものでした。

そう考えると、三年間のカルロス技師長の謹慎は寧ろ、軽い処分だったのかもしれませんね? 

……と言ったところで、もうこれくれいで勘弁してください」


 両将軍はそこで目を見開き、顔を見合わせている。

 そのあとで、フォスター将軍が口を開いてきた。


「想像以上に、随分とややこしく長い話だったが。観ようによっては、そう……なるのか?」


 なんとも酷い言われ様だなぁ、と思いつつ。

「ええ、少なくとも私にはそう感じられたもので……無駄に長くて、どうもすみません」

 と肩を軽く竦めながら困り顔に答えておく。


「あ、いいよ……気にするな」

 両将軍とも、悩み顔を見せ。ソファーに深く座り直していた。


「しかし、参った。極論は極論として、そうなるとだ。今のこの流れを変えるのは、相当に厄介で困難そうだなぁ~。

少なくとも……カルロス技師長を立てての改革は、『もはや有り得ない』ということだろう……」

「……そうなると、《科学者会》から評議会への意見は今後、益々影響力を持たないものになりそうですね? フォスター」


「ああ……どうやら、そうなりそうだなぁ……」

 両将軍とも、とても残念そうな様子を見せていた。

 今更だけど、自分は何か拙いことを言ったのではないか? とつい不安になってしまう。


「あのぅ~……そうなると。どの様に困るのでしょうかぁ?」

 その何ともいえない不安の正体がまるで解らず、苦笑いながらも両将軍に訊いてみたのだ。

 するとフォスター将軍はこちらを呆れ顔に見つめ、頬杖をついたままで言う。


「お前は勘が良く鋭いところを突いてくる割に、肝心な所を見落とすところがあるから不思議だよ。

コイツもまた、お前がよく言う《一つの見方》って奴なんだろうがなぁ~?

大事なことは、その者が『何をったか』ということよりも、『どうして来たか』の方に重きを置くと、視点が随分変わるとは思わないか?」

「え? あ、はぁ……それはまあ確かに」


「……アヴァイン。現在の《評議会議員》のほとんどの意見は、国土の拡大路線だ。それくらいは勿論、知っているよな?」

「あ、はい。それくらいのことなら……この私にも」


 何しろもう既に、南東部への軍事作戦が立てられている。『また戦争か』と思わず呆れてしまうほどの露骨さで、周辺の者達から伝わってくるピリピリとした緊張感はそれだけで無駄に疲れを増すほど張り詰めたものがあった。


「それに対し、《科学者会》は慎重論を唱え。主だってそうした動きを見せる《評議会議員》に対し、牽制している。

その科学者会のおさが、カルロス技師長……」

「……あ!」

 引き続いて、カスタトール将軍がそう話を繋げて来て、アヴァインはそこでハッさせられた。彼はカルロス技師長のことを色々と調べ、解っていた。いや、解っていたつもりだったのに……実に迂闊だったといえる。

 思わず自分の考えの浅さに、片手を顔にあて覆い、深い溜息をついてしまう始末だ。前々から両将軍には『お前は迂闊な奴だ』と散々罵り言われ続けていたものだが、つくづく自分は迂闊者であるらしい……。


「確かにカルロス技師長は、君が言う通り指摘を受けるあのような失言をしたのも確かだ……。が、少なくとも、例の女性記者が言ったような戦争容認論者で無い事は、その彼のこれまでの行動が実績として物語っている。

――解るか?」

「はぁ……そう言われてみると、確かに……そうですよね……」


「そのカルロス技師長を筆頭とした科学者会の発言力は、益々低下するのは予想するに容易い。

おそらく……というか既に、来年早々に出撃の命が下る南東への出兵に際しての人選は、《評議会議員》側の思惑がかなり色濃く入り込んでいるのは、実に明白だ。

私やカスタトールを含め、カルロス技師長が在籍する《科学者会》寄りの諸将のほとんどが、これの名簿に加えられていたからね。

評議会寄りのワイゼル将軍も、何故か今回の遠征に加えられてはいたが……。

これは恐らく、我々を監視させるつもりでのことだろう」


 ──!?


「あのぅ……もしやそこで、何かが起きると?」

「それはわからないさ。確かな情報を掴んでのことじゃない。今話した内容なんて、単なる状況証拠による想像の範囲に過ぎないんだ。だからそう深刻に考えるなよ、アヴァイン。ハハ♪」


 それを聞いて、ほっと安堵の吐息をつく。


「とは言え……用心するに越したことはない――訳で」

「ああ、確かにな」

 両将軍はそこで互いに目配せし、それからニヤリとしたかと思うと、こちらを同時に見つめてきた。


「まぁ……そこでだ。アヴァイン。君には一つ、頼みたい事がある」

「――え?」

 その時のフォスター将軍の頼みは、自分を驚愕させ、ついでに困らせるのに十分なものであった。



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