エクストリーム極彩色

1.いばらきクリエイターズハウス - 導入

 こんにちは。はるばる来てくれて、ありがとう。道に迷った? ここ、すごく変な場所だものね。つくばの中心部みたいにビルが立ち並ぶ訳でも、はずれみたいに研究所が立ち並ぶ訳でもない。通ってきたと思うけど、あるものと言えば、公園と学校と謎の空地くらい。

 住宅街? ああ、あっちはゴーストタウンなの。取り壊し予定の公務員団地の一角をシェアアトリエにしようだなんて、大胆なプロジェクトよね。


 ということで改めまして、県営シェアアトリエ・いばらきクリエイターズハウスへようこそ。文芸サークル「よたがらす」の千住です。

 私たちはフリーライターだけど、色んなクリエイターさんがいるよ。イラストレーターとか、ゲームクリエイターとか、漫画家とか。

 見た目めっちゃ家でしょ? 元は家だからね。とりあえず中にどうぞ。


 中もめっちゃ家でしょ? 家だからね。リビングのソファにどうぞ。

 ソファと机は入居したときからあったよ。

 漫画と小説、たくさん置いてあるでしょ。テレビや本棚は、ゲーム制作スタジオの人が置いてくれたの。ゲーム制作スタジオさん? この棟の二階を割当てられてる。筑波大学アドベンチャーとか作ってたよ。

 お茶作るね。私の独断と偏見と嗜好によりダージリン淹れるよ。お茶苦手だったらミネラルウォーターをどうぞ。

 そこの、「よ」の字のシール貼ってある扉がよたがらすの部屋。和室だよ。私は普段、中二階のダイニングで作業してるけどね。

 どの棟も一階は和室なんだ。よたがらすの部屋は本ばかりだけど、他所は人型ロボットが床の間に居たり、ハイテク機材が押し入れに入ってたり、かなりシュールよ。

 はいダージリン二丁あがり。どうぞ。

 何を隠そうこのダージリンもゲーム制作スタジオの代表さんが買ってくれたんだよね。ご飯食べさせてもらったり物貸してもらったり色々教えてもらったり、あの人には足向けて寝られない……。

 ちなみにこのアトリエ、家賃ないのよ。共益費だけ払えばいいの。こんな良い施設や仕事を与えてもらって、県庁にも足向けて寝られない。どっち向いて寝ようかしら。


 そこの公園と中学校は見た? 桜、見事だったでしょ。ハウスの敷地にまで桜の花弁が降ってきて、いい気分だわ。

 まぁ、桜の時期は体調悪いから、そう楽しいことばかりでもないのだけれど。

 部屋、薄暗くてごめんね。せっかくいい天気なのに勿体無いけど、カーテン閉めないとしんどいの。

 蛍光灯もうるさいから消させてね。あの独特の音が苦手で。蛍光灯の音、あなたには聞こえる? 聞こえないと何言ってるか分からないよね。ごめんなさいね。今の時期の私、過敏になっているから。

 アーレンレンズもかけたままでいい?

 そう、これ。私がずっとかけてるサングラス。これ、ただのサングラスじゃないのよ。かけてみる? かけたら外、見てみて。

 明るいまま色だけ鈍くなってるでしょ? セピアがかって、夕焼けみたいだよね。

 私の苦手な色を弱めてくれるレンズなの。もちろんオーダーメイド。筑波大学の研究室で作ってもらったんだけど……うーん。

 なんかもう本題に片足突っ込んじゃった。どこから話せばいいかしらね。

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