アネモネの日々

@loppp

第1話アネモネの日々 一話【誕生】

 ・・・ここはどこ?


そう考えたのは初めてだった。そもそも自分が何者かもすら分からない。


でもそんな事はどうでもよかった。ただこの心地良い、この空間に身を委ねていられれば。




 ・・・ん?


しばらくすると目の前に誰かが来た。黒髪の女の子だ。


見るとまだ年端もいかない子供の様。


私が入っているガラスのケース越しに、にこにこしながらこちらを見つめている。


しばらくすると気が済んだのか、こちらに手を振って帰っていった。




 ・・・二日後


またあの女の子が来た。私が眠っているガラスケースに顔を限界までべったり近づけて何か喋っている。正直怖い。そしてようやく気が済んだのか、またにこにこしながら帰っていった。




 ・・・それから一週間後


あの女の子が来た。にこにこしながら何かの装置の前に立ち、おもむろに操作していた。そしてしばらくすると私のガラスケースが開いていく。


ガラスケース内を満たしていた、温かい液体と共に私が排出されていった。


外の空間は初めてだ。感じる空気はとても寒い。




「私が分かる?」黒髪の少女が話しかけてきた。


「分かったら首を縦に振って?」


私は言われた通りにした。


そうすると彼女は、「やった成功だわっ!やっぱり私は天才っ!」とはしゃぎまわっていた。




それが私と主人の出会いだった。



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