AWAKENING

あくる日、時差呆けもすっかり抜けて生まれ変わった様にクリアーな目覚めのよい朝をあたしはを迎えた。

極め細やかなヴェルヴェット地の柔らかく肌触りのよい毛布の内側でくるり寝返りを打った所で、自分がネグリジェもバスローブも下着すらも身につけない、生まれたままの全裸姿でいることに気がついた。


我ながらあーあやっちゃったなぁとは思いはするものの、今更結果論じゃない。

あたしは後でしても仕方のない後悔は、時間の無駄なのでしない事にしているの。



夜更け過ぎまで濃密な愛の囁きを交わし合った一夜限りの恋人の姿はもう見当たらなかった。

何故なら、目を覚ます前までに部屋を後にする様に、他でもないこのあたしが頼んでおいたから。

だって一夜の火遊びの残り火の後始末よろしく、翌朝になって二人できまり悪い思いで顔を見合わせるだなんて、苦痛以外の何物でもないでしょ?

それこそ途端に現実の生活に引き戻されて、例えそれが百年の恋だったとしても一気に冷めてしまいそうな気がして怖くなるの。

唯一、身体に刻まれた心地よい鈍痛を名残り惜しむ様に噛み締めながら、先刻からあたしを起こそうと懸命に鳴り続けているモーニングコールのアラームに手を伸ばした。



ん、アラーム?アラームなんて掛けてない。



音の主はあたしのスマートフォンで、けたたましく鳴り響いているのは、例のあたしの私設秘書である小鳩菖蒲のテーマソング(本人曰く)だった。



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