第17話 ソラの日記 三月十日
ソラ、明日から入院だ。
とうやがそう言ったのは朝食のしたくをしているとうやに、おはようを言いに行ったときだった。
入院? わたしどこも悪くないよ。
本当に心当たりがないのでわたしは不思議そうなかおをしていたと思う。
あー、そういえばきちんと話したことはこれまでなかったな。ごめん、ソラ。ぼくもはるきも学者バカだからな……。
とうやもはるきもバカなんかじゃないよ! とてもすごい科学者だよ!
わたしが反論すると、とうやは苦笑いをして、そういうことじゃないんだ、と言った。
ぼくとはるきはソラを人間にするために必要な手順をよく知っているけど、ソラにはきちんと教えていなかったね。
そう言うととうやは朝食を用意する手を止めて手を洗うと、テーブルのイスにこしかける。わたしもはなしがしやすいように、テーブルの上までかけあがる。
とうやが順序だてて話してくれたことには、わたしは人間になるために半年間特別な液体にみたされたポッドの中に入っていなくちゃならないらしい。その間に体の細胞のほとんどを取りかえて、十七歳の人間の女の子に変身するらしい。
半年間もじっとしてるの? 退屈で死んじゃいそう!
わたしが悲鳴をあげると、とうやはそこは大丈夫とうけあう。
入院中も意識はあるから、仮想現実のなかですごせばいい。ただ、安全のために外のネットにはつなげられないけどね。ぼくもはるきもちょくちょく遊びに行くよ。
わたしはとうやの話の全部をりかいしたわけじゃないけど、ずっと寝たきりとかそういうのではなさそうで少しホッとした。
じゃあ、今日が猫でいられるさいごの日?
そう聞くととうやはうなずいた。なにかしなくちゃいけないかなとちょっと考えたけど、人間になれる喜びにくらべればどれもたいしたことはないように思えた。
だけど、お昼寝の時間だけは大事だから、これは人間になってもゆずれないなと思った。ごはんを食べたらリビングでお昼寝! ひとまず猫として最高の幸せを味わっておいたのだった。
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