第6頁「全裸代行」

『全裸になりたいという欲求を抱えたあなたへ。

 あなたの代わりに、全裸になります』


俺:

「…………」


全裸屋;

「お兄さん、全裸になりたそうな顔をしてるね」


俺:

「な、なにをバカな事をっ。人聞きの悪いっ」


全裸屋:

「全裸代行、一回百万円だよ?」


俺:

「高いな!? ってそうじゃない、帰り道の路上に怪しげな看板を立てて座っている不審者がいたら、立ち止まってしまうだろうが。けっして全裸になりたい欲求なぞない」


全裸屋:

「そうですかい。だったらあっち行ってくださいよ。商売のジャマですってね」


俺:

「いや待ちたまえ。俺は善良な市民であるからして。こんな不審者を見逃しておくわけにはいかん。このスマホで県警に通報してやる」


全裸屋:

「なにをおっしゃいます。あっしは善良かつ自由な旅人ですよ。ただ行く先での日銭稼ぎとして、こうして全裸代行をやってるわけでさぁ」


俺:

「その全裸代行というのがまったくもって理解ができん。というかだな、旅人だからといって警察にご厄介になるような稼ぎをするなよ」


全裸屋:

「それはもっともな話で。ただねぇ、中には全裸になりたいと望む客もいるわけで。通報するっていうんでしたら、別の場所に行って商売の続きをするだけでさ」


俺:

「そうか」


全裸屋:

「そうですよ」


俺:

「……まぁ、季節の変わり目だからな。風邪には気をつけろよ」


全裸屋:

「それにはご心配及びませんや。なにせ見ての通り、あっしは一年中、フンドシ一丁ですからねぇ」


俺:

「もしもし、警察ですか?」




完。










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