③
キミアの宣言から数時間。村の人は代わる代わる説得を試みたがキミアが折れる事は無かった。
一人、また一人と諦めた者が立ち去っていき、集会部屋には神と二人だけが残された。
「……….…」
前まできた最後の一人を睨み、キミアは何度目になるかわからない言葉を吐き捨てる。
「錬金術はもうやらない」
ゲンはキミアから目を離なさずに返す。
「なんでだ?」
「あんな危険な術の為に命を削りたくない」
「そうか……じゃあ、どうする?」
キミアが固まる。こちらに道を委ねてきたのは彼が初めてであった。
「どうする……って」
「この村は錬金術を中央に回ってる、錬金術に関わりたくないというなら外に出ないといけないだろ」
「…………」
それはキミアにも分かっていた。しかし生まれてからずっと錬金術の研究をしてきたキミアには他の生き方がまだわからない。
「ゲン、お前はどう考えている? 人生の先輩として道の一つでも提案してみるといい」
無言の時間を破ったのは神であるボルだった。
「お前の気持ちは少し分かる。俺も錬金術に生命力を、命を使うなんてバカらしいと思っている」
「え……?」
この村の人らしからぬ発言にキミアは顔を上げる。
「でも俺は行く先が無かったからな、妥協した」
「妥協……」
初めて話している相手を見たキミアは思い出す。
錬金術を主とせず、あくまで薬学のサポートにしか錬金術を使わない家系があったと。
「だから俺は錬金薬学を選んだ。どうだ? 次の道が見つかるまで、俺と一緒に歩いてみないか?」
「錬金……薬学」
「薬学師を目指してもいい。正直俺は栄養士の方面に進んじまおうと思ってる」
キミアは考える。生命力を使わない錬金術ならばイレイサーのような現象が起こる事はない。
それに目の前の青年は最終的に錬金術から離れる道まで目指しているという。
「……あ」
考えるより先に手が出ていた。その手は一回り大きい手に包まれる。
「お願い、します」
「……細いなお前、ちゃんと栄養考えて食ってるか?」
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