第13章 文化祭と新たな火種 4


 放課後、雄介は体育館の裏に来ていた。

 なぜこんなところに居るのか、理由は簡単だ。呼び出されたからだ。

 最近は多くなり、週に3回は呼び出されている雄介。


「んで、今日は誰だ? もういい加減しつこいんだが」


「よぉ、流石加山の彼氏、イケメンだな~」


 着崩した制服に、耳にはピアス。柄の悪い連中が雄介の周りを囲む。人数は4人といつもよりは少ない。

 皮肉を言う、おそらくリーダーである男子生徒に雄介はため息交じりにいう。


「それはどうも、じゃあ帰っていい?」


「舐めてんじゃねーぞ、てめぇ」


 元来た道を戻ろうとした雄介の行く手をふさがれてしまう。

 威圧するように、雄介にいう連中だが、雄介は全く怖くなかった。

 こんな威圧よりも、もっと大きな恐怖を与えられたことのある雄介にとって、この連中がしている事は、お遊びに見えた。


「ハイハイ、わかったよ。じゃあ、あんたらは俺をどうしたいの?」


「あぁ、調子に乗ってる見たいだからなぁ~、お灸をすえてやるのさっ!!」


 勢いよく殴り掛かってくる四人の柄の悪い男子生徒達。

 雄介はそんな彼らを素早い動きでかわし続ける。


「はぁ……はぁ……噂通り、素早いな……」


「なぁ、帰っていいか?」


 雄介は呆れた様子で柄の悪い連中を見ながら言う。

 そんな雄介を睨むリーダーの男子生徒。しかし、そんな表情から一片。リーダの男子生徒は口元を歪め、にやりと笑う。


「今だ! 押さえろ!!」


「!!」


 隠れていた仲間が、雄介の足と腕を取り押さえる。

 いきなりの事で驚いた雄介だが、両手両足を拘束されても、その態度は落ち着いていた。


「あー、うごけねぇな……」


「へ! これで殴りまくれるなぁ……」


「それはちょっと勘弁してくんない? 怪我したら、説明すんのめんどいから」


「やめるかよっ!!」


 リーダーの男子生徒は、拘束された雄介に向かって再び殴り掛かってくる。

 雄介は避ける事も出来ず、腹に大きな一撃を食らう。


「は! ざまぁ見ろ!」


 勝ち誇る男子生徒達。

 反撃開始といった様子で、男子生徒達はニヤニヤしながら、雄介の周りに集まる。

 だが……


「あー、まぁいいパンチじゃない?」


「んな……なんなんだこいつ……」


 顔を上げた雄介は涼しい顔で、取り囲んでいる連中の顔を見る。

 男子生徒達は驚きで、一気に目を丸くし口をポカンと開ける。


「まぁ、正当防衛ってことで、反撃するけど……帰って良いって言うなら、なんもしないけど?」


「な…なめんじゃねぇ!! やっちまえ!」


 一斉に殴り掛かってくる男子生徒達。

 雄介は拘束されていた両手両足を振りほどき、4人の一斉攻撃を交わす。4人の攻撃は、雄介を拘束していた仲間2人に当たり、その2人は倒れてしまった。


「残りは4人? まだ隠れてたりしないよな?」


「な……なんなんだこいつ…」


 平然とする雄介は、周りにもう仲間が居ないかを確かめ、残る4人の方に向かって歩みを進める。

 4人の男子生徒は、歩いてくる雄介から距離をとるように、後ろに下がっていく。


「まぁ、一応忠告したし、それにお前らは殴っても良い気がする」


 雄介は4人に迫っていきながら、ゆっくり話す。

 いつもなら、攻撃を避け続け、相手が付かれたところで逃げるのが、雄介の戦法なのだが、今日はこの4人を殴りたいわけがあった。


「お前ら、たまに優子と遊んだりしてたよな?」


「だから、なんだって言うんだよ!」


「最近、優子が付き合い悪いからって、お前らは優子に色々迫ってるらしいな」


 この柄の悪い4人は、嫌がる優子を無理矢理遊びに連れ出そうとしたり、優子に必要以上に着信を掛けたりと、最近優子を困らせている。


「しかも、お前らの目的って、優子の体だろ?」


 4人を睨みながら、雄介は静かに言い放つ。

 この4人は、優子を無理矢理拘束し、如何わしい事をしようと企んでいたのだ。それを知った雄介は、この呼び出しに応じ、真相を確かめようと思ったのだ。


「だったらなんだよ! あれだけの上玉だぞ! ヤった後に動画取って、売りさばいてやんだよ!」


 勢いを取り戻すリーダーの男。四人なら負ける事はないと思っているのであろう。ニヤニヤしながら、雄介にそう話す。


「クズだな……」


「なんとでも言いやがれ! 今、仲間を呼んだ! お前ひとりじゃどうにもなんねー数だ! お前をボコった後は、計画通り加山をうぶ!……」


雄介は話している途中のリーダーの男子生徒の口を片手で鷲掴みにし、持ち上げる。

周りに居た3人の仲間は、驚き腰を抜かして座り込む。


「そうか、なら丁度良いな、おかげで遠慮せずに、そいつら全員黙らせられそうだ」


「ん~!! ん! ん~!!!!」


 雄介の手を抑えながら空中で足をバタバタさせて、雄介から逃れようとする。


「ほら、放してやるよ」


 雄介はリーダーの男を空中に持ち上げたまま、手を離して地面に落とす。

 リーダーの男子生徒は、地面にしりもちをつき、呼吸を整える。


「ば……化け物…」


 一人の男子生徒がそうつぶやいた。雄介はその言葉にピクリと反応し、言った本人を見る。


「なぁ、そのお仲間っていつ来るんだ? 多分この学校の生徒じゃないだろ?」


「し…知るかよ! でもいくらお前が強くても、20人もいれば勝てないだろう!!」


「あっそ、じゃあ丁度いいな」


 余裕そうに平然とつぶやく雄介。

 その時、先ほどまでしりもちをつき、呼吸を整えていたリーダーの男子生徒が、雄介に向かって勢いよく立ち上がり、殴り掛かってきた。


「でりゃぁ!!」


 雄介は殴り掛かってきた右腕を掴むと、そのまま男子生徒の体ごと地面にたたきつける。


「かはっ!」


 男子生徒はそのまま気絶してしまった。

 

「まったく、少し寝てろ」


 雄介は呆れた表情で、倒れたリーダーの男子生徒にそういうと、視線を残った3人に移した。


「で? お仲間はいつ来るの?」


「はは……今来たみたいだぜ!」


 その一言で雄介は気が付いた。背後から感じる無数の人の気配に……

 雄介が振り向くとそこには、20人以上のガラの悪い集団がいた。


「おいおい、なにもやしっ子一人に苦戦してんだよ~」


「早く片付けて、加山ちゃんで遊ぼうぜ~」


 おそらく周辺の高校の不良だろう、学年はバラバラだが、全員学ランを着ている。

 そんな集団に囲まれれば、普通なら怯えたりするものなのだが、雄介は違った。


「猿みたいな考えの奴らが、こんなに居るとわな」


 呆れた表情で言う雄介。

 そんな雄介が気に食わなかったのか、不良たちは一気に戦闘態勢に入る。


「んだとコラぁ!!」


「舐めてんじゃねーぞ!」


「ぶっ殺してやるよ、もやし野郎!!」


 ある者をは指を鳴らし、またある者は武器を取り出して雄介に迫ってくる。

 腰を抜かしていた3人も集団に加わり、笑みを浮かべる。

 そんな状況でも雄介は落ち着き、慌てる様子はない。

 いつ始まってもおかしくない状況で、更にもう一人、第三者がやってきた。


「今村ぁぁ!! 加勢に来たぞぉ!!」


「ぐはっ! なんだこいつ!」


「「いてて!! 放せコラ!」


 集団の更に後ろから聞こえてきたのは、柔道部のエースであり、自称加山優子を応援する会実行部隊隊長の北条だ。


「フン! 鍛え方が足りん!!」


「北条! お前何しに来たんだよ!」


 雄介の方に来た北条に雄介は尋ねる。

 しかも、北条は柔道着姿だ、おそらく部活の真っ最中だったのであろう。


「校舎裏にお前が呼び出されたと聞いてなぁ、しかも柄の悪い連中が大勢ここに集まっていったっと聞いて、駆け付けた!」

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