第4章 夜の攻防と新たな決意
加山を空き部屋に止めようという話をしていたところ、里奈がそれに意義を唱えてきた。
「別に良いじゃないですか?あそこは空き部屋ですし。」
「重要なのはそこじゃないわ!ユウ君の部屋の隣という事よ!」
「それが何か?」
「加山さん!」
「はい?」
里奈はいきなり、加山の方を向き問いかけた。
「あなたは、ユウ君の事を本当に諦めたの?」
「えっと....まぁ....はい。」
戸惑いながら、加山は歯切れ悪く答えた。
「ほんとに?私には、まだあきらめてないって見えるんですけど。」
「里奈さん。加山はもう俺の事を諦めてますよ。」
「そうかしら?私は、「今日の事がまだ怖いの....一緒に寝ていい?」みたいな展開があるんじゃないかって心配してるの!」
「そんな展開あるわけないですよ。なぁ、加山。」
「う....うん。」
「おい。目が泳いでるぞ。」
雄介が加山に尋ねると、加山は雄介から目を逸らしながら答えた。
「とりあえず、今日はもう寝ましょう。明日も学校あるんですから。」
「本当に大丈夫かなぁ~?」
「やだなぁ~、お姉さん。今日は疲れたし、私だってそんな体力残ってないですよ~。」
そう言うと、三人はそれぞれの部屋に移動し初めた。
雄介は疲れが今頃になって出てきており、ベットに横になった途端に眠ってしまった。
時刻は深夜1:00。雄介の部屋の前には、一つの影があった。その影はドアを開け、雄介の部屋に入って行く。
「クゥ.......クゥ.......」
「フフ。可愛い寝顔.......。」
部屋に入っていった人物は、自分の顔を雄介の顔に近ずかせる。その距離が0になろうとしたところで、もう一人の侵入者が現れた。
部屋のクローゼットが大きく開け放たれて、里奈が出てきたのだった。
「やっぱりきたわね!加山さん!!!」
「お姉さん!!なんでそんなところに?!」
「怪しかったから見張ってたのよ!」
胸を張ってドヤ顔で主張する里奈。しかし、里奈はすごい汗をかいていた。
「嘘です!!あなたも同じ目的で、私が来たからとっさにクローゼットに隠れたんでしょう!!」
「ギク!」
「分かりやすい反応ね....」
「そんな事はどうでもいいのよ!なんで加山さんがユウ君の部屋に忍び込んだのかを聞いてるのよ!!」
「それはこっちのセリフです!お姉さんこそ何をしてたんですか?!」
「夜這いよ!!」
「はっきり言ったよこの人!」
雄介が寝ている横で、女性人二人が火花を散らしながら言い争っている。
「ん~。」
「やばい!」
「お姉さんが大声出すから!」
雄介はうなるような声を上げて、半分目を開き始める。どうやら半分起きてしまったようだ。
「ユウく~ん。おねんねしようね~。」
「ちょっと!何やってるんですか!!」
里奈は半分起きかけている雄介に添い寝をしながら、うっとりとした視線を雄介に向ける。
「何って、弟を寝かしつけてるだけよ。」
「お互いそんな歳じゃないでしょ!!離れてください!!」
「あ!ちょっと!!」
加山は雄介から里奈を無理やり引き離そうとする。しかし里奈も引き離されまいと、必死にベットにしがみつく。
「ちょっと、起きちゃうでしょ!!さっさとベットから離れなさい!」
「兄弟なんだからいいのよ!あなたこそ話なさい!!」
二人が雄介の隣で騒いでいると、雄介は完全に目覚めてしまった。
「二人とも、何してるんですか?」
「「あ....」」
「出てってください!!!!」
雄介は二人を部屋から追い出し、再び眠りについた。しかし、少しすると再び部屋のドアがあいた。
「誰ですか。いい加減に....」
「ごめん。そんなつもりじゃなかったの....」
「加山....」
「そのままでいいから聞いて。ちゃんとお礼が言いたくて....」
「....別に大丈夫だ。俺が勝手にやったことだからな。」
「でも、助かったよ。ありがとう....」
「気にするな。」
「何かお礼がしたの....」
「気にするなって、お礼なんかいらなから。」
「でも....」
言葉に詰まってしまう加山。雄介は立ち上がってドアの前の加山の方に行った。
「だったら、今度昼飯おごってくれ。それで十分だ。」
「え....それって、デーt....」
「違う。」
「そんなにキッパリ言はなくても....」
「やかましい。俺の事は諦めたんだろ?」
「うん、一回はね。でも、惚れ直したかも....」
「はい?」
頬を赤らめながら、うつむき気味に答える加山。
「だってあんな事があった後だったらね~。」
「加山、何回も言うが俺はお前とは付き合えない。理由はわかるだろ?」
「大丈夫だよ!私が絶対にその女性恐怖症を治してみせる!もう決定だから!絶対に諦めないから!!」
「なっ!勝手な......」
「勝手じゃないよ、雄介のためでもあるんだよ。今後の雄介の人生のためにも、今ここで治しておかないと!」
「確かに一理あるが、それとこれとは話が違うだろ!」
「違わないわよ!女性恐怖症を治すには女の子と触れ合ったほうが良いでしょう?それなら私と仲良くして乗除に慣らしていくのが得策じゃない?」
真面目な表情で言う加山に、雄介は思わず身を引いてしまった。言ってる事は確かに正しいのかもしれないが、雄介はまだ怖かった。
過去のトラウマが蘇ってしまうのではないか、と言う心配と本当に治せる保証がないことが雄介は不安だった。
「雄介!」
「はい!」
真剣な面持ちで加山は雄介を読んだ。呼ばれた雄介はとっさに返事をする。
「私を信じて、私はあなたが好きだから雄介が好きだから、あなたの苦しみを取り除く手伝いがしたいの。」
いつになく真剣な加山の言葉に雄介は顔が熱くなるのを感じた。
「勝手にしてくれ!....まったく、何なんだ....」
雄介は加山の押しに負けてしまい、加山の提案を了承してしまった。だが、雄介自身も少し加山に期待してしまう気持ちもあった。
「うん!じゃあ、さっそく一緒に寝ようか!」
「それとこれとは別だ!」
雄介はそう言うと勢いよく部屋の扉を閉めて、眠りについた。
*
次の日の朝、雄介は目が覚めていきなり頭を抱えていた。
いつものように学校に登校しようと、雄介はいつも通りに準備を進めていた。しかし、今日はいつもと違う事が二つあった。
一つは加山が泊まりに来ていたという事。そしてもう一つが、里奈が今日は早めに学校に行く必要が無いという事だった。
「だから、変な誤解を生むかもしれないから、加山は先に行けって。」
「別に良いじゃん。私は気にしないよ。」
「俺が気にするんだよ、変な噂がたったら嫌だろ?」
「私は別に気にしないのに、むしろ噂が立ってくれた方が良いし。神山みたいな変なのが寄ってこなくなるから。」
「その分俺が被害にあうんだよ....」
加山と雄介が玄関先でもめていると、制服姿に着替えを済ませた里奈がやってきた。
「お待たせ、どうしたの?揉めてるの?」
雄介は里奈に登校の事を話した。すると里奈は何かを考え始めた。
「確かにそれは困るわね....」
意外にもまともな意見が帰ってきたと雄介は思った。何時もなら加山を焼き付けるような事を言って喧嘩になっているパターンのはずだったが、今回は違かった。
「私とユウ君の二人っきりのラブラブ登校を邪魔されるのは困るわね~。」
「結局そこなんですか.....。てかラブラブってなんです.......。」
やっぱりいつも通りの里奈に雄介はため息を吐く。
「邪魔なのはお姉さんの方です!雄介は私とラブラブ登校するんですから!」
加山が雄介の腕に抱きつきながら里奈に反論し始める。雄介は「またか....」とため息をつきながら、二人の喧嘩を見ていた。
「ユウ君は私と二人っきりで登校したいのよ。邪魔をしないでくれる?」
「年食ったおばさんより、若い方が良いよね?雄介?」
突然話を振られて戸惑う雄介。さっさと学校に行きたいと思いながら、雄介は二人をなだめ始める。
「遅刻するといけないんで、さっさと決めましょう。二人は先に行ってください。俺は後からいきます。」
「え~、せっかく久しぶりにユウ君と登校できると思ったのに~。」
「なんでお姉さんと登校することがぜんていなんですか!」
「あなたこそ自分が邪魔ものっていう事に気が付かないの?」
またしても喧嘩を始めてしまった加山と里奈、雄介は二人を置いて家をでた。
「勘弁してくれ....」
雄介はポツリとつぶやきながら、いつも通りの道のりを歩く
『私を信じて....』
昨日加山に言われた事を雄介は思いだす。加山はなぜこんなにも雄介を好いているのか、雄介は気になっていた。雄介が加山と接するようになってまだ二週間ほどしかたっていない。雄介は加山を信用しても良いのかを考えながら学校に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます