第27話 計画
この頃の続光は飯川光誠と温井紹春の暗殺について討論することが多くなっていた。
色々な計画を考えては廃案にし、それを繰り返していた。
そして飯川光誠があることに気づく。
「毎年一度行われる“連歌の宴”であれば10人の護衛は紹春のまわりを警護しない」
「それは確かか光誠殿」
「うむ、警護は屋敷の外を見張るのみで中には歌人やらしか入れん」
「つまり中の働く女中をこちら側につけるのか」
「そは無理じゃ、女中は当日温井家から派遣されるものばかりよ」
「ではどうするおつもりか?」
「仕置の意思を持つものが当日中に入るしかあるまい」
「しかし、さきほど歌人しか入れぬと・・・光誠殿は歌などできるのか?」
「いや、できぬ」
「ではその“連歌の宴”とやらには入れぬのか?」
「うむ・・・」
(この男・・・自身が入れぬ“連歌の宴”とやらの話をしてどうするつもりなのだ・・・)
「じゃがワシの祖父であれば入れる」
祖父とは飯川宗春の事をいう、彼はこの時代の歌人の第一人者である冷泉為広の弟子として七尾では有名であり政僧として室町幕府との交渉にあたったこともあった、彼は畠山義総のお気に入りの一人であり、また歌人として温井紹春と交流もあった。義総は臨終の際に自分の子である義続に飯川光誠を紹介し「側近とせよ」と言い残している、恐らくそれも飯川宗春の影響力であると思われる。
「だが宗春殿は既に80近いと聞いているが、いくら近づけても葬るのは無理であろう?」
「うむ、そこでじゃ続光殿・・・毒を使おうかと思うておる」
「毒っ・・・!!」
「毒であれば大爺様にも可能であろう」
「確かに可能かもしれぬが、どうやって入れる」
「幸い“連歌の宴”は畠山家の行事じゃ、よって席順は畠山義綱様が差配することになる」
「・・・という事は」
「つまり、大爺様を紹春の隣に置く事ができる」
「なるほど、それならば」
「どうじゃ続光殿、ワシの策もなかなかであろう!」
「いやお見事でござる、して毒は」
「ワシが家臣を通じて手配しよう、猛毒をな」
ここで二人が目を合わせくすくすと鼻で笑いだした。
(これはいけるぞ)
しかし失敗続きのせいか、何やら突如言い知れぬ不安感に襲われる
(大丈夫じゃ、今度こそ、今度こそ上手くいく!)
続光はそうやって己を励ました
そして数ヵ月後七尾城下の町の一角の「川吹屋形」と言われる木々が立ち並び水が流れる大きな庭の周りを塀で囲った舘にて畠山家主催の“連歌の宴”が開かれるのであった。
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