【り】りんどう

 『リンドウ』は代表的な山野草ではないでしょうか。

 リンドウの仲間は約400種類ほどあり、日本にはそのうち約18種が分布しています。変種や亜変種が数多くある上に、切り花向きや鉢植え向きに人間によって改良された品種も多くあるそうです。

 別名を『ニガナ(苦菜)』『ササリンドウ(笹竜胆)』『リュウドウ(竜胆)』『クタニ(苦担)』などといいます。青紫色が鮮やかで、可愛らしい花ですね。


 13歳まで山形で育った私ですが、そこでの思い出は実に美化されているんじゃないかと思う今日この頃。

 記憶が曖昧なので、実際はもっと「こんなものか」ってことでも美しく見えたり、大きく見えたことがたくさんあるような気がします。


 その中の一つが園芸店です。

 祖父の家から程近く、バイパス沿いにある園芸店がありました。山野草や苗が敷地いっぱいに並べられているのです。

 母は祖父の家に行くたびにそこへ連れて行ってくれたのですが、子どもながらに盆栽や苔、苗木を見ているとワクワクしました。

 

 母はそんなに園芸に熱中していたとも思えないのですが、結構な頻度でそこへ私を連れて行きました。はっきり言って彼女が何を買っていたかすら憶えていません。

 けれど、そこにあったリンドウの花だけはしっかり目に焼きついています。私は園芸店に行くと、真っ先にリンドウを探すのです。

 どれも小さな苗でした。2つか3つの釣鐘状の青紫の花が咲いていて、あの凛とした姿に心を奪われ、私はじっと見入っていました。


 ところが、何故か母に「リンドウが欲しい」と言えず、園芸店に行くたびに見つめるだけ。結局、買うことはありませんでした。


 何故、ねだることができなかったのか。

 なんだか、自分のものにならないような気がしたからです。そう、自分の手に負えない気がしたんですよね。

 もし、我が家の庭先にリンドウを植えていたら、叱られて外に追い出されたときにでもその花のそばでうずくまってふくれっ面をしていたかもしれませんねぇ。


 リンドウの花言葉は『正義』『誠実』『貞淑』などありますが、そのほかにも『悲しんでいるあなたを慰めたい』『あなたの悲しみに寄り添う』というものがあります。

 松田聖子主演映画『野菊の墓』では嫁入りする女の子に、想い合っていた男の子がリンドウを差し出していました。あの切ない別れの場面を思い出してしまう花言葉です。


 『野菊の墓』は雑誌『ホトトギス』に発表された伊藤左千夫の小説です。15歳の斎藤政夫と2歳年上の従姉である民子との淡い恋を描いたもので、夏目漱石が絶賛した作品でもあります。

 私は映画しか観ていないのですが、政夫が民子を『野菊のようだ』と言います。そして民子は政夫を『リンドウのようだ』と返すのです。花言葉の『愛らしい』そのもののやりとりじゃありませんか。結局、二人の想いは報われることはないのですが、花言葉の『苦悩』が思い出されます。


 リンドウは8/31、9/12、9/16、9/17、9/18、9/20、9/26、10/2、10/3、10/13、10/20、10/23の誕生花です。紫だと9/13と9/20、白だと9/18になるようです。



 リンドウの花言葉一覧:『正義』『正義感』『貞節』『誠実』『淋しい愛情』『的確』『苦悩』『勝利』『貞淑』『愛らしい』『固有の価値』『あなたの悲しみに寄りそう』『悲しんでいるあなたを愛する』『悲しんでいるあなたを慰めたい』

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