浦山太郎

 太郎は村一番の働き者で優しい青年でありました。

 ある日、子供達が何かを叩いていじめています。ウリ坊です。

「子供たち、ウリ坊をいじめるのはよしなさい」

「やだよ。こいつは大きくなって、お父の畑を荒らすんだ。今のうちに殺してしまんだ。お父も喜ぶ」

「ならばわしに五文で売らないか」

「ならいいよ。兄さんの好きにしな」

 子供達は金をもらってウリ坊を太郎に渡しました。

「かわいそうに、山へお帰り」

 太郎はウリ坊を放しました。

 その夜、太郎の家の扉を叩くものがいます。

「誰だ。こんな夜更けに」

「お頼み申し上げます。今日助けていただいたウリ坊の姉でございます」

 太郎が外に出てみると絶世の美女が立っていました。

「あなたがウリ坊のお姉さん。信じられないな」

「本当でございます。今日のお礼にご馳走を用意いたしました。どうぞついて来てください」

「ごちそうとはありがたい。行きましょう。行きましょう」

 太郎は美女の連れてきた輿に乗って山奥に入って行きました。

「ここは?」

「獣宮城でございます」

「ほう」

 獣宮城の客間にはご馳走が用意されていました。それはジビエ料理でした。太郎はそれが何かよく分からないままに、それを喰らい、酒を飲みました。

「あのウリ坊は?」

 ふと太郎が言うと、美女は答えた。

「あなたのお腹の中にいます」

 太郎はハッとしました。そしてちょっと嫌な顔をしました。

「仕方ないのです。弟は『たたき』にされてしまったのですから」

 美女は残酷なことを言いました。そして、

「あたしを抱いて、弟の生まれ変わりを作って」

美女に言われて興奮した太郎は寝室に美女を連れて行き、思う存分弄びました。

「そろそろ帰らねば」

 太郎が言うと、

「では、お土産にこれを」

と箱を一つくれました。

「さらば」

 太郎はお土産を持って帰りました。

「さて、箱の中身はなんじゃろな」

 と太郎が蓋を開けると、白い煙がもくもくと……。

 それはドライアイスに覆われた『高級ジビエハム、ソーセージ詰め合わせセット』でした。

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