第2話

俺は顔がサーッと青ざめていくのを感じた。

ありえないそんなことが。

男同士のアレソレは興味もないし、経験ももちろんないが。

いつしかの会社の飲み会で同僚がふざけて下ネタを言っていたときに、男同士のヤリ方とかいう、なんとも下世話なネタを話していたことがあった。

男の場合はその…ケツに突っ込むらしい。突っ込むのは男役で、突っ込まれるのは…

うああああちょっともう考えるのいやになってきたんだけど…

そうこう考えているうちにもケツの痛みが警鐘を鳴らしている。



「あ、もしかしてケツ、痛む?」

「は?」

「最初は優しくするつもりだったのに…あー…失敗したなぁ…」

「あの、何の話ですか…」

「あ、いや、こっちの話。あんたが可愛いから自制きかなくて「うああああ!!」ちょ、何、びっくりしたー…」



ななななに恐ろしいことを口走ってんだこのイケメンは!

もう言っていることの半分以上も理解したくない。

しかも見た目は爽やかイケメンなくせに、口走ることがなんとも突拍子過ぎて俺はついていけない。いや、ついていきたくもない。

ヤバ、今ので鳥肌止まんないんだけど…


「というか…」

「あの、な、なんですか…」

「なんか俺、朝勃ちしてるっぽいんだけど」

「はぁ?!」

「なあ、もっかいシていいか?」

「む、無理無理!!」



また理解不明なことを言い出すと、イケメンはあろうことか立ち上がって俺に接近してきたのだ。彼の言葉通り股間に目をやると…俺より年下だろうに、立派過ぎるモノをおったてていたのだ。こ、こんなもんを俺の…いやいや考えるのはよそう。鳥肌どころじゃ済まない。


「いいだろ?」

「きもいんだよ馬鹿野郎!!!」

「…っ?!」



何が「いいだろ?」だよ!!

だんだんと距離をつめて両手を広げてくる変態に耐えきれなくなって半泣き状態の俺は、無防備な股間に蹴りをくらわせると、バックをひっつかんでその部屋を慌てて飛び出したのだ。


蹲って悶えてながらも何か奴が話している気がしたが、即刻無視しておいた。同情の余地はないだろう。



時計を見るともう会社に行かなければならない時間で、俺は盛大なため息をつきながらも、よれたネクタイを直して会社へと向かったのだった。

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