エピローグ
第102話 俺たちの女神様
「あれ? そういえば女神さまはどこに行ったの?」
「それは……」
「…………」
菜々芽の問いに、シェリルも花梨もどう答えていいか迷っているようだった。
女神は俺たちを守るために、全魔力を放出して消えてしまった。
もうここには、いない。
「ナナメ、よく聞いてくれ」
「シェリルちゃん?」
「女神様はわたしたちを守るために、犠牲になったのだ……」
「それって、どういうことなの?」
「つまり、女神様は…………死――」
「あふううううんっ!! アラタの赤玉は何という感触なのでしょう!! ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろperuaouannakppっ!!」
突然のことだった。
聞き慣れた声が聞こえたかと思ったら、
白い翼を広げた女神がいて――
俺が出した赤玉にむしゃぶりついてやがるではないか!!
「あー、女神さまだー。おかえりなさい! ぎゅーっ」
「ただいま戻りました、アラタメナナメ。おお、ようじょを抱きしめていたら失われたわたしの魔力が戻ってくるようですよ。……クンクン、すーはー」
「……おい女神、菜々芽から離れやがれ」
女神があまりにもヘンタイっぽい顔をしているものだから、俺は女神を強引に菜々芽から引きはがした。
艶やかな声で「ああン、そんな殺生な……」とか言うものだから、俺は頭を1発叩いてやった。
ったく、こっちは心配してたってのに、元気じゃねーか。
まあ、さっきスキルを覚えたときのメッセージウインドウが出た時点で、女神が無事なんじゃないかってことに思い至らなかった俺も、うっかりしていたのだが。
「アラタ、痛いです……。これでもわたし、結構ギリギリだったのですよ? あなたがたを守ったあとに魔力が尽きて、実体化する力すら失ってしまったわたしは、仕方なく痴情を去って天界に戻るしかありませんでした」
――うん、今の「地上」が違う意味合いに聞こえたがツッコまないぞ。
「あなたがたが魔王と戦っている間、わたしは力を蓄えることに専念し、やっとこうして実体化できる魔力だけは確保できた、というわけなのです。この度はご心配をかけて、申し訳ございませんでした」
「元気になってよかったね、女神さま!」
「女神よ、こちらこそ守ってくれてありがとうございました」
「ごめんね、あたしが攻撃したからあんなことに……」
みんなが女神のもとに集まって、談笑を始める。
俺は遠目からながめていたが、何となく女神が嬉しそうだなと思った。
『うふふ、まるでみなさんと仲間になれたかのようです。嬉しい……』
今の……、俺の脳内に語りかけてきたわけじゃないよな。
じゃああれか、女神の声がうっかり漏れてきたってことか。
おい女神、俺の脳内に心の声が漏れてるぞ。
『ひゃっ、ほ、本当ですか!? そんな、恥ずかしいです……。今のは聞かなかったことにしてください…………』
女神の方を見ると、みんなに囲まれながらも顔を真っ赤にして俺の方を見ていた。あーあれは本当に恥ずかしがってる顔だな。どうしようかなー、今のあとでみんなにも言っちゃおうかなー。みんな喜ぶだろうしなー。
『もう! イジワルしないでください~!』
女神がほほをぷくーっとふくらませている。
その様子がとてもかわいくて、俺はつい吹き出してしまうのだった。
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