第59話 きのこ狩り②
「よっしゃー、さっそくこのキノコを抜いてやるぞー!!」
俺は手のひらサイズのキノコを握りしめると、適度な力で引っこ抜く。
ところが……キノコはうんともすんとも言わなかった。
それならと、俺は全力で引っぱってみる。
しかしどんなに力を入れても、勢いをつけても抜くことはできなかった。
はあ、はあ……。何だよこれー!
ここまで抜けないなんて、伝説の剣とかそういう系じゃないのか?
「アラタ。どうやらこのキノコは、特別な方法で抜くようだぞ」
「そうなのか……?」
シェリルに言われて、俺はクエストの依頼書を見た。
確かにそこには、普通とは違う抜き方が書いてあった。
えーと、なになに……。
【キノコを握ったら、その手を上下にシコシコ動かしましょう。キノコがふくらみ、大きくなって熱を帯びたらポロリと抜けます】
「……最低な方法だ」
「ぬくぬくになると抜くなんて、まさにヌくだな」
「もうシェリルがどの抜くを言っているかわからない」
俺はそう言いながら、キノコに手をかけた。
さすがに女の子にこんなことをやらせるわけにはいかないし。
シコシコ。シコシコシコシコ……。
キノコがちょっとずつ大きくなっていく。
やべえ、すごく気持ち悪い。
シコ、シコシコシコシコ。
シャッ、シャシャシャッシャッ!!
俺の手の動きに合わせて、何やら鉛筆が走る音が聞こえてきた。
何が起こっているのか見てみると、花梨がスケッチブックを構えて熱心に俺の手を描き写しているではないか。
「こ、これはBL本を描く絶好のモチーフ……!! はぁはぁ……」
息を乱すな!
つーか花梨、ちょっとどころじゃなくBLがすごく好きなんだな。
しかもまさか、自分で描くことができるだなんて。
【腐ったおんなのこがあらわれた!! どうする!?】
腐った死体みたいに言うな。どうもしねーから。
あと女神、ちょくちょく意味ないメッセージウインドウ出すのはやめろ。
『……はーい』
残念そうな心の声のあと、邪魔なメッセージは消えた。
よしよし、これでキノコ採りに専念できるぞ。
「ふむ、さすがはカリンだ。いきなりしゃせいとはな」
ドヤ顔でこっちを見るシェリルは、かわいいだけに腹立つから無視!
ふたたび俺は手を動かすと、どんどんキノコは大きくなっていく。
すぽんと音を立てると、地面から抜けた。
やった!と思ったのもつかの間、さらに大きくなっていって。
――全長が1メートルを超えやがった。
しかも茎のところに顔ができて、手足が生えたと思ったら動き始めるし。
やべえぞ、これ!! もしかしてモンスターじゃねえのか!?
【……………………。】
おい女神、そこはメッセージウインドウ出せよ!
意味あるところだろうがよ!!
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