第23話 ~チーム・クラウド~


「俺たちの新しい仲間になったライトだ。皆、よろしくな」


 ケイがチーム・クラウドメンバーの前に立つ。紹介されたライトは軽く会釈すると、左目の眼帯にクラウドのメンバーたちの視線が集まったのが分かる。


「あー……そうだ、ライトの左目は、シードラゴンとの戦いでこうなっちまったらしい。まぁ、それを治すためにココに入ってもらったようなもんなんだけどな」


 メンバーから、可哀想にと、それぞれの声が漏れる。

 その中で、一人の少女はライトをまっすぐな瞳で見つめていた。


「ま! ライト、ここはいいチームだからさ、ゆっくりしていけや」

「あ、あぁ。ありがとう。よろしく」


 エースであるケイの言葉を受け取りつつ、ライトはチームメンバー達の哀れみを含んだ視線から逃げるように目を伏せていると、伏せた目線の高さに居た少女と目が合った。


 少女も、ココでの戦闘服を着ている。


 戦士なのだろうか。目があった後すぐには逸らせず、ライトは気まずそうにしながらも、会釈をする。少女は少しして、微笑みを返した。

 その無邪気な表情に、ライトは懐かしさをも覚えた。


 似てる――。


 ライトは、思い出さずにはいられない女性の顔が浮かぶ。


 笑うと無邪気に見える、あの笑顔が――。


 アイカ――。


「そんじゃ、まぁ一度俺の部屋でゆっくり話そうぜ。そうだ、ライトの部屋もちゃんと用意してっからさ」

「あぁ、ありがとう」


「ケイ兄、待って!」


 ケイとライトという大柄な男達の元へ、先程の少女が走ってきた。


「おぅ。サナ、どうした?」


 サナと呼ばれた少女の頭にぽんぽんと、手を置くケイ。


「あのね、お兄ちゃんに挨拶したくって」

「おぉ、そっか。サナ、お前勇気あるなぁー」

「ん? 聞き捨てならないぞ、その言葉」


 ライトは口の端を釣り上げてケイへと笑いながらも軽く睨む。


「いやぁ、こんな可愛い娘がお前に挨拶ってさ。すげぇって思うよ、うん」

「もう、ケイ兄ちゃんったら! あの、はじめまして、サナです」


 サナはぺこりとライトにお辞儀をして、顔を上げて微笑む。


「あれだな、転校生がきたよな気分だろうな、サナにとって、お前は」

「ほう。まぁ、そう思ってくれたら助かるかな。よろしくな、サナちゃん」


 ライトの言葉に、ケイは驚いて仰け反る格好になる。


「……ちゃん!!? おいライトお前、ちゃんって言うのか!?」

「何だよ」

「いや、意外すぎてツボって腹痛てぇ」

「お前な……! まだ小学生ぐらいだろ、ちゃんくらい付けて当然だろ」


「サナは小学4年生ですっ」

「そっか、そっか。よろしくな、サナちゃん」


 ライトはサナの頭に手を置くと、サナの頬が紅くなったのが分かった。


「ほぉ……。ライトくん、これは罪ですな。アイカが居るってのにな」

「は!? 何言ってんだよお前」

「年の差過ぎんぜ、まぁ、まぁ……。俺は何も言わねぇけどな」

「いや十分言ってんだろうがよ」

「ケイ兄意味わかんないよー」


 サナは二人のやり取りにコロコロと笑い出していた。そんな笑顔に、ケイもライトも微笑んで見ている。


 頬を紅くしたサナが、嬉しそうな笑顔をライトに向ける。


「サナはチーム・クラウドここのアイドルだからなぁ」

「だろうな」


「そんで、こいつは俺の師匠だ」


「ほー……は!? え!?」

「予想通り、予想通り。ククッ。サナは、ギャラクシー・ウォーここでダントツ一位とも謳われているヒーラーなんだ」

「まじ、かよ!?」

「一位とか言われると恥ずかしくなっちゃうよ、ケイ兄。あたしはヒーラー役なだけ」


 堪えた様に笑うケイ。そして嬉しそうに微笑むサナ。

 サナがケイの師匠、二人の関係性が不思議でたまらなかったライト。


「でもさケイ兄、あたしがケイの師匠っていうと、なんか変じゃない? ケイ兄が年上なのに」

「んまぁそういうの、関係ないだろ。才能の問題だし歳は仕方ねぇだろ」

「んー……。分かったよ、うん」

「まぁ、サナ。早速で悪いが、サナも俺の部屋まで一緒に来てくれよ。ライトの左目を診てやって欲しい」

「うん、分かった。行こうよ、ライトお兄ちゃん」


 サナは嬉しそうにライトの手を柔らかく握った。

 ライトはそんなサナに優しく手を握り返す。チーム・ルナシスを抜ける時から、心が冷めきったようになってしまっていたのだが。

 サナのお陰で少し、温かい気持ちになったのが分かった。

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