第10話 ~私は、戦う~ ①
休むことなく続く、圧倒的な風圧。
人間、それなりの体重はあっても、こうも軽々と風圧で飛ばされてしまうものなのか。
「ぐっ」
死にたくない。
このギャラクシー・ウォーの世界では死なないって、リーナは言っていたが。
人間の本能が、死にたくないと叫んでいる。
怖い! 怖い!! 震えが止まらない――!!
ロングソードを持つ手が明らかに震える。
地面は揺れ、次々と襲いかかってくる巨大なタランチュグラの猛攻な攻撃。
きちんと避けているのだろうかと思うほどの、情けなく、素人である証拠の避け方。
避け方がどうしても転ぶようになってしまうものだから、視界が上手く定まらない。
何度も頭によぎる、ユララムの血。
今、息すら出来ているのだろうか。生きることが精一杯だ。更に、頭によぎる、ユララムの血。
怖い――!! 怖いよ――!!
だけど……助けないと――!!
ユララムが飛ばされた方向へ一刻も早く行って、止血しなければ。
死なないと分かっていても、血を見てしまった以上、やはり放っておくなど
できない。
ユララムが飛ばされてしまったため、戦えるのは本当にアイカ一人だけになっている。
「助けて……!!!」
どうにもならなくても、声に出してしまう。
アイカ一人の戦力では。新人の非力すぎる力では、相手になるはずがない。
どうしたら。
逃げても、他の誰かが犠牲になる。
どうしたら。
呼吸は更に浅くなり、恐怖と重なって、視界が暗くなっていく。
嘘でしょ、このままじゃ――。
ヤラレル―――!!
アイカは思わず瞳を閉じた。
直後、上半身に衝撃を受けた。
それは、今までとは明らかに違う、あたたかい衝撃――。
その妙な衝撃に、閉じていた瞳を恐る恐る開ける。
視界に飛び込んできた、次々と過ぎ去っていく景色にアイカは混乱した。
「目ぇ閉じるな!!! 危ねぇだろうが!!!」
「ラ……イト……!?」
疾風のように現れたライトが、タランチュグラの猛攻撃からアイカを抱きかかえて逃走を開始していた。空気が耳元を
「どうして、私の居場所が……?」
「お前だけ、通信に応答しなかったからな」
「ご、ごめん……全然聴こえなかった……」
「……心配したんだぞ!」
安心して頬が緩んだ途端、ライトに大きな声で言われ、アイカは全身に緊張を走らせた。
「ごめんなさい……」
しばしの沈黙の後。
「ったく……。……無事でよかった」
「……ごめんなさい」
「もう謝んな。デカイ声出して、悪かった」
いつものライトに戻ったと思えば、アイカは瞬時にユララムを思い出した。
「あ……! ねぇ、ライト! ごめん、私、助けたい人がいるの!」
「助けたいって、今俺たちが一番危ないだろ!」
「で、でも! 私を守ってくれた!」
突然に現れたユララムが時を止めてくれたこと。
「今はダメだ! リーナは足を負傷してるし、マイキーもリーナのトコで、戦えるっつっても、俺たちしか居ねぇんだ!」
「でも……!」
「どこの奴かはしらねぇが、今は自分の命の事を優先しろ!」
「命って……ここでは死なないって、リーナは言ってた!」
「おい!? 馬鹿言ってんな!!!」
反対されると、どうして反発したくなるんだろうか。
ライトにユララムとの出会いを話そうも、そんな状況でない。
こんな森林の中で一人倒れて。仲間もいないであろうに。
誰が助けるの?
「ごめん、ライト」
「っ、おい!!?」
アイカはライトの身体から弾くように降りた。
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