chapter 16 第4の審判-1

1  9月2日 神谷陽太②




 学校の中にある、勉学に効率よく勤しむため「教室」と名付けられ区切られた閉鎖空間。

 気味が悪いほど小奇麗で塵ひとつ無いこの3年1組教室に何人もの生徒が着席している。

 誰も喋ろうとしないし、不気味なほど静かで、今はこの教室には『冷徹な秩序』しか存在してはいない。

 そしてどの生徒も何かに恐怖し、そして震えている。

 さらに教室内にはぽっかりと空けられ、花瓶が置かれてある生徒の居ない机と椅子がいくつも点在していた。

 五十嵐アキラ。

 東佐紀。

 山田秋彦。

 金城蓮。

 仲居ミキ。

 伊瀬友昭。

 審判の犠牲者たち。

 そんな教室内に一人鋭い眼光を放ち、周りを見渡す神谷陽太の姿があった。

 彼は周りとは違い怯えてはいない。

 その表情の中には、怒りと正義と冷静さが入り混じったような意思を感じ取れる。

 陽太はゆっくりと目を閉じて深呼吸する。

 まるでここに自分が存在していることを確認しているかのように。

 深く深く。


 【自分は、自分以外の誰でもない】


 そのとき、教室のドアが開き、ゆっくりと生徒たちを怯えさせないように担任教師の静間が入ってきた。

 静間は教壇に立ち、教室を一通り眺め、生徒たちを見守るように、ゆっくりと口を開いた。

 生徒たちを警戒させないように。

 もう、後悔をしないために。


「新しい月になりました。皆さんなるべく、いや絶対に、誰にも不快な思いをさせないように。これ以上、誰も犠牲にならないために……」


 静間は、陽太たちから受けた言葉を告げた。

 そして陽太は現在このクラスの現状を嘆くように深く再認識したのだ。


「このクラスは呪われている」と。

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