幻想世界の心療所 ―ぶっちゃけ告解室でよくね―

たり

フロリダ州で発見された手紙 ―経緯

――今は亡き古森ふるもり夫人の消息不明となったご子息から、夫人宛てに送られたと思われる手紙の、時系列的に最も古い内容であるものから抜粋、再編する。

この手紙は、フロリダのある民家の庭で発見され、奇跡的に本来の届け先に持ち込まれたものである――





















親愛なる母上様へ。


 世の中クソくらえです。ノーゴッドです。

先日手紙に書いたエルフのお姉さんがヤツメトマトなるトマト類をくれました。肉食だそうです。トマトがおいしい時期ですがそちらはいかがでしょうか。

さて、少しでもゴッドのクソさを伝えられればと、一筆したためております。


 いかに善良な生活を送ってても、ゴッドの気紛れで災難に遭うんです。

そろそろウチにある怪しげな神グッズの処分を検討してください。頼みます。

前回は近況報告のみでしたが、落ち着いたので事の顛末について報告しますね。



 その日は、蒸し暑い夜でした。

学生向けアパートの古びたエアコンが、ギシギシと怪しい音を立てて黙り込んでました。なんでも私より年上らしいですエアコン先輩。限界だと思うんですけど、大家さんもったいない星人みたいで買い換えてもらえませんでした。

先輩がお亡くなりになったようなので、冷たい飲み物買おうと思ったのが運のツキでしたね。


 時間は確か忘れもしない深夜1時。母上様の暮らすならまだしも、こちら都会ですので夜の街へのお誘いはこれから、って時間ですね。自販機までの数十mなんですけど、確か3回はキャッチに会いました。うち一人は母上様と同じところの人でした。正直深夜に手相相談聞かれると思ってませんでした。


 ええ、きっとそのせいですよ。その事考えてたからだと思うんですけど、一個やらかしたんですよね。一週間近く晴れが続いてるのに、水たまりが道の真ん中にあったんですよ。当時特に考えずに「お、水たまりやんけ。跨いだろ」くらいに思ってね、飛び越えたんですよ。


 ……水たまりを踏み越えたらそこは鬱蒼と生い茂る森の中でした。

雪国と違って情緒もクソもないんですよ。原生林っていうんですっけ。ザ・自然の王国みたいな。

ポカンとしてると、新種の生き物を発見できました。こんな簡単に見つけていいのかってくらい新種。なんてったって30cmサイズのトンボに腕生えてるんですよ腕。



 ……拝啓 母上様。異世界転生ってトラックに撥ねられるとか分かりやすい展開じゃなかったでしたっけ。

これじゃあホラーじゃありませんか。

女神も状況説明もありやしない。

そのトンボから逃げて、まあ前の手紙に書いたエルフさんに出会ったんですけどね。

そんなわけで母上様。

信じれば救われるのはあなたの心だけなのであの神シール?とかいうのの定期購入やめませんか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る