羽化

初めて器の変化が訪れた日

永遠の別れをした気がして

母の笑顔と「おめでとう」の言葉に

「さようなら」と言って

少しだけ

泣いた。


変化を遂げる蝶々は

その速さをどう受け止めるのだろう。

さなぎを破った瞬間に

その気持ちを切り替えて

蝶として生きるのか。

姿は変わっても、その美しい羽を憂い

柔らかな葉の上を恋しく思うのか。


願っても、願っても

芋虫にもさなぎにも戻れないことを知りながら。


鏡の中には見慣れた景色。

誰が当たり前に

大人になる事を許しただろう。

瞼越しの景色は

あの頃のまま。

寸分たがわず

流れているのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る