fight!

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fight!

 私、柿沼美波は、私立星の丘中学校の二年生として、日々勉強・部活、恋に奮闘している乙女。恋というものを知ったのは、一、二週間前のことだ。休み時間に机の上から消しゴムを落とした時、拾ってくれたこと。その時私がかがんでスカートの中が他の男子に見られたときにかばってくれたこと。それから、翔太君が何かするたびに私の目は輝いた。

翔太君は、いや、翔太は私の幼稚園からの幼馴染、十一年間一緒でも、恋心なんて一度も芽生えたことがなかった。今思えば、不思議なくらいだ。好きな人ではない……、特別な友達。

 それが好きな人に変わったと確信したのは、土曜日に皆で遊園地に行った時のこと。私と翔太と香菜という私の友達と想空という翔太の友達、テニス部の仲間たち。運動会の代休で遊びに行ったのだ。香菜は私が翔太に気があるのを知っていて、ジェットコースターを高所恐怖症の想空君と一緒に待っていてくれたのだ。一時間という長い待ち時間も翔太となら天国だった。もちろん乗っている間も。まあ、あっちからしたらただの幼馴染とのおしゃべりとしか思っていないんだろうけれど。私はそれでもよかった。翔太と一緒にいられるなら。飲み物も三人分しか買ってこなくて。なぜか私と翔太が一緒に飲むことになって。しかも、それを翔太は嫌がらないし……。私も嫌なんて思ってないけど。

(プハー)

なんて言っている。今日も何度かアピールしたのにまったく気づいてない。我慢、我慢。そのうち、きっと気付いてくれる。告白しても私の知っている翔太は振るなんてことはしない。翔太は優しいから。だけど、今の私には告白する勇気なんてない。振られないと分かっていてもやっぱり怖い。ご飯も終わり、私がトイレから帰ると、香菜と翔太の会話を聞いてしまった。

「ねえ、翔太。翔太は美波のことどう思ってるの?」

「は?幼馴染。いや、友達。それとも召使パシリかな?もしかして、恋愛対象とか考えてるとか思ってたの?うけるんだけど。いや、無理無理。」

これには、さすがに香菜も呆れている。やっぱり、翔太は私の気持ちに気付いていないんだ。もうこうなったら告白してしまえ!どうせ、オッケーしてくれるんだ。私は、遊園地から帰ったあと、近くの公園に翔太を呼んで告白することにした。

頬は赤くなっていて、手はガクガクしている。赤い頬を汗が一筋伝って……。

「何?ほっぺた赤くなってるよ。熱でもあったの?」

翔太はそう言い、私に近づいてきた。何よ、こんな時まで優しくしないでよ。

「ううん。熱はないよ。うん。元気、元気。あのさ。も、もし!私でよければ、つ、つ、付き合ってくだはい!」

噛んでるし足も震えている。だが、今の私にはこれが精一杯だった。はあ、はあ、はあ、息切れがとまらない。止める気もない。もう、こんなときには流れに任せ

てやってしまおう。私が息切れをしているうちに答えは返ってきた。一瞬、何のことを言っているのだか分からなくなった。えーと、えーと。

「なんなの?急にかしこまって。本気で言ってるの?」

あー。いつもの翔太だ。私の翔太だ。

「うん。本気なの。」

「美波。」

翔太の頬も赤くなり、ちょっと照れているみたいだ。やっぱり、成功だ。

「ん?」

「ごめんなさい!俺、好きな人いるんだ。だから、ごめん。付き合えない。」

(なによ、なによ。急に告白されて照れてるんでしょ。正直に言えば言いのよ。私のこと好きって。)

「ごめん。」

しかし、そう言い残して翔太は帰っていった。

 「美波~。起きなさい。」

「はーい。」

私は空返事をして、目覚ましを止めてむくむくと起きだした。

はっ!夢だったのか。私は吹奏楽部だし、遊園地なんて行ってないし。

告白もしていない。そうだ。うん。振られてもいないんだ。

ただ、一つ正しいのは、私は翔太のことが好きであるってこと。

「fight!今日も一日頑張ろう。」

私はベッドから降りた。翔太、待っててね。



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