素晴らしいお誕生日

 病気で入院している黒人の女の子がいました。彼女の身体は弱り切っていて車椅子無しでは動く事ができません。そんな彼女にはたくさんの友達がいました。


 ある日、彼女の友達全員は彼女を乗せた車椅子を押して外へ連れ出しました。向かった先には海があります。大きな石がごろごろと転がる海辺に彼女を運び、予め用意していた場所に車椅子を停めました。友達は海を背にして横にずらりと並び、彼女の方を向いて歌を歌い始めました。すると、友達が並んでいる真上あたりの空中に、映像が浮かび上がりました。その映像は彼女が生まれてからの全ての記録でした。


泣いて生まれて、両親に抱かれ、

たくさんの初めてのことを経験し、

嬉しいことや楽しいこと、悲しいことがあり

成長し、お友達がたくさん出来て

ある日病気が見つかって——


 映像は進み、やがて今映像を見ている自分が映りました。映像は更にその先へ進み、未来の様子が流れます。映像の最後のシーンは彼女が棺の中に入っていて、眠っている場面でした。棺には優しい色をした花が溢れんばかりに敷き詰められており、その中で眠る彼女の顔はとても穏やかで、幸福に満ちていました。


「HAPPY BIRTHDAY TO YOU ♪」


 ずっと聴こえていた友達の歌う歌が映像と同時に終わりました。今日は、彼女の誕生日だったのです。みんなが歌っていたのはバースデイソングでした。「みんな、ありがとう。」そう言うと、彼女はとても幸福そうにこれまでの人生で一番の笑顔を浮かべました。

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