昭和屋と顔無し医師
建物と建物の間に、細く暗く、角度が急な階段があるのを見つけたのでマリは降りてみました。
その先にあったのは狭くて暗くて散らかったお店でした。ただの物置のようにも見えます。そこに置いてあるものは何もかも昭和の時代に作られたもので、昭和の流行歌集やアイドルや映画のポスター、児童書、学習帳などが商品でした。マリは喜んでそれらを次々と手に取ります。マリはこういった物が大好きなので他にも面白いものをしまっていないか店員さんに訊くことにしました。
店員さんはマリのおなかより下くらいまでしかない低いカウンターにいて壁にもたれかかっている、小さくて渇いた空豆のようにしわしわのおじいさんでした。目は大きく、黒目ばかりです。「もっとこういうもの、ありませんか?」とマリが訊くとおじいさんは大きなクチを開けて、高音のノイズのような声を出しました。何を言ったのかわからないのでもう一度同じ質問をしましたが全く同じやりとりになってしまったのでマリは諦めてお会計をしました。
それらを抱えてマリは病院へ向かいました。薄暗い小さな病院です。机に向かっていたお医者さんがマリの方を向いて「オカエリナサイ」と小さな声で言いました。そのお医者さんは明るい茶色の髪をしていて穏やかな雰囲気でしたが、顔が有りません。顔の部分は真っ暗な影のようなものが詰まっています。「先生、次の診察はいつですか」とマリが訊くと「19日か、26日で」と答えが返ってきました。
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