049 [”夢”の洞窟]へ <04/05(金)AM 10:38>


 出会いの街[ヘアルツ]に到着して2日目。俺は『LV10 → LV12』へと2LV上昇し、VITに振って『VIT12』とした。

 そしてしばらくは夜間に『盗ゾック(斧)』LV8先輩に稽古をつけてもらおうと考え、目立ってしまう日中は『優良店』を探すべく、『プレイヤーショップ巡り』に繰り出した。

 ところが『南口2前の広場』付近にやって来たところで、[夢の洞窟]探索の募集を見つけてしまい、ヤマコウにの言葉をかけながらも、探索に参加する事にしたのだった。


◆◆◆出会いの街[ヘアルツ]『主要街路』イメージ図◆◆◆

※東1、南1の十字路の中心にクリスタル


  2 1

  北北

2西╋╋東2

   ┣┫

1西╋╋東1

  南南

  2 1



 出会いの街[ヘアルツ]の『南口2前の広場』で、索敵&罠担当の『LV17 ヒイラギ 斥候』にをお願いし、壁&攻撃アタッカー担当の『LV15 ケイ 狂戦士』、回復&ワクチン担当の俺…という最小?メンバーで[夢の洞窟]探索へ向かう事になった。



 出会いの街[ヘアルツ]の南口2の門からフィールドへ出ると……

こちらでも『お花畑』が広がっている。

 『南口1』方面のモンスターは『発芽はつがねずみ』LV5、『ナゴヤシュダガヤ』LV7、『盗ゾック(斧)』LV8の3種類だったのだが、『南口2』方面でも引き続き『発芽はつがねずみ』LV5、『ナゴヤシュダガヤ』LV7は生息している。花畑が広がっているのはそのためだ。


 そして『盗ゾック(斧)』LV8と、『盗ゾック(ナイフ)』LV9が、若干しているのか、『常にこの2体』で行動している。

 はじまりの街[スパデズ]の[山の洞窟]で、『山ゾック(斧)』LV6が、1体だと出来ていても、2、3体となると苦戦を強いられていた様に、常に2体の『アクティブモンスター』というのは、そのLV以上に厳しい戦いとなる。

 また同じの『山ゾック(斧)』LV6が、2、3体に増えるだけ…だったのと違い、の『盗ゾック(斧)』LV8と、の『盗ゾック(ナイフ)』LV9…というモンスター2体の編成のため、油断してかかると予想以上に苦戦をしたり、命を落とす事になりかねない。


 さらに もう1体…『孤独のウルフ』LV13が、ここ南口2方面から初登場となる。もちろん? 『アクティブモンスター』で、出会いの街[ヘアルツ]で最初の強敵。群れから離れ、常に『単体』で行動しているローンウルフ(一匹狼)だ。

 別に『グルメ』でも無くで、『イルカモネ山猫』LV5と同様、近辺の草食動物などを狩って食べるのだが、こちらは行動範囲が広く、ヘアルツ周辺なら『東口1、南口1以外どこにでも出没』する。

(ようするに南口2以降、ヘアルツ周辺では常に見かける事になるモンスターだ)


 「もしかして!?」…と恐怖された方が居る? かも知れないのだが『ウルフ』なので、空中を飛んで縦回転や横回転をしながら、な『牙』での攻撃をしかけてきたりはしない…ので安心してほしい。

 もちろん? 『付属の忍者』の号令に合わせて、な必殺技をしてきたりもしない。『犬』じゃなくて良かった(安堵)、ありがとうウルフ。


 …と『南口2』方面は、この様な感じである。特に『盗ゾック』2体と戦闘中に、行動範囲の広い『孤独のウルフ』がやって来たりすると、絶望しか無くなる。

 能力的には、STRの『盗ゾック(斧)』LV8、DEXの『盗ゾック(ナイフ)』LV9、STR&DEXの『孤独のウルフ』LV13…で、ソロだとフルボッコされる未来しか見えない。

 また『孤独のウルフ』は『行動範囲が広い』という特徴、性格のため、『通常のモンスターの2倍程度まで、しつこく追いかけて来る』…傾向がある。

 そのためピンチになってから「逃げよう」と思っても、その”DEX”で『イルカモネ山猫』LV5の様な素早い追撃を放ち、その”STR”で『盗ゾック(斧)』LV8の『ショルダータックル』相当の結構なダメージを食らって、逃げきれずに死亡する…という事態がよくおこる。ウルフのクセにっ。



「それじゃ早速…万能抗原体[オールマイティーワクチン]」

 『お花畑』 = 『発芽はつがねずみ』LV5 = 『病気感染』 である。

綺麗な?花には『病気』がある。例によってMPは満タンであるので、さっさと使うべし。


「お~助かる」

「気休めですよ」

「そうなのか? 「かなりかかりにくくなる」とか、(ゲーム時代のネット情報で)書いてあったんだが…」

「どうなんでしょう? まぁ説明文にも『過信は禁物』…とあるので、そういう事で」

「そうか~、まぁ「無意味な接触とかは すんな」って事だな」


 「………」このスキルの効果がイマイチわかりにくい理由の一つに、これといって「何のメッセージも無い」…というのもあるんだよなぁ。いつもの様に、

《報告:万能抗原体[オールマイティーワクチン]:状態異常を回避しました!》


 とか防ぐ度に出てくれれば…いや鬱陶うっとうしいだけか。何にしろ『全くアクションが無い』ので、効いてるのか? 効いて無いのか? 良くわからない。

 しかも俺は「ヤバそうなら使っとけ」というタイプなので、言ってみれば『常時 万能抗原体[オールマイティーワクチン]状態みたいなモノ』なので、スキルを使用していない状態が「どういう感じ」なのか? わからない = 比較対象が無い…のだ。


 かと言って、わざわざ使に『感染率検証テスト』とか、治療薬より安い『治療院』を使用するにしても”もったいない。

 ……やはり『気休め』として、使用し続ける運命だろう。

※これらの理由で、『防いで当たり前』。食らえば「万能抗原体[オールマイティーワクチン]を使用してるのに『状態異常』を食らった」…というマイナスイメージだけが残る事になり、主人公の中で『このスキルに対する不信感』がつのって、『気休めスキル』呼ばわり されるハメになっております。



「ヒイラギ、戦う敵のLV」

「あぁ~そうだったな。え~っと…ケイが『狂戦士』だから、「LV14以下のモンスターは、戦わないで『逃走』」…で、いいか?」

 ケイに促され、『リーダー』のヒイラギから確認が入った。


「あぁ、そうですね。構わないですよ」

「すまん」

「いえ、低LVの内は『貯金』しておかないと厳しいでしょう」

「『貯金』か…そうだな、使はしたくない」

「難儀な職業だよなぁ(笑)」

「頑張って下さい」

「あぁ」


 「………」サウザンド・ジョブ・オンライン(Thousand Job Online)TJOでは、「様々な条件やプレイスタイルによって上位ジョブへの転職が可能となっていく」というの通り、目指す職のために、自分で『条件』や『制限』を付けて守っているプレイヤーや、「こんな変なプレイをしてみたら、何か変わった職があるのでは?」…という、『試行錯誤』をするプレイヤーは数多くいる。

 ケイは、「一例として戦士を選び~常に強敵と戦い大ダメージを受けながら戦っていれば狂戦士へ」…と公表されている『狂戦士』という事なのだが…この職も かなり『条件』や『プレイスタイル』に制限がある。

 言うまでも無いかと思うが、俺もその『制限』のあるプレイヤーの1人だ。


 そのため「〇〇出来ないので~」、「〇〇は しないので~」などと、パーティなどを組む際や、探索をする前などに、色々と『条件』などが提示される事がある。

 しかし『TJO経験者』にとっては、『普通の光景』、『日常茶飯事にちじょうさはんじ』であるので、ほとんどの場合は問題無く受け入れられる。(さすがに『ヒーラー募集』に応募しておいて、「回復しません」などと言えば断られるかと思うが)


 皆様の中には、「こんなな『条件だらけ』で面倒くさそうな奴、パーティに入れねぇよ」などと感じておられたかもしれないのだが、これが 1000サウザンドの、職業ジョブがある、オンライン…というゲーム(に似た世界)なのだ。

 プレイヤー毎、職業毎に色々な『事情』や『条件』、『制限』があり、まして「まだ見ぬ未知の職業を見つけだそう」…という 挑戦者魂チャレンジスピリット開拓精神フロンティアスピリットに溢れるプレイヤーは、ヤマコウで無くとも応援したくなるモノである。

 まぁこの様な理由があり、TJOでは多少の『条件』や『要求』などは、「まぁ何かレア職を狙ってるんだろう、頑張れ」、「そんな制限があるのか、大変だな」、「〇〇さえしてくれればOK」…ぐらいに思って、みんなサラっと流しているのである。



「よし、それじゃ[夢の洞窟]まで、モンスターを避けて走り抜けるぞ」

「あぁ」

「了解です」

 ここ『南口2』方面は、先ほど紹介した通り、L5~LV13までのモンスターしか生息していない。「LV14以下のモンスターと戦闘しない」…という方針である以上、ここでは一切の戦闘が出来ない事になる。

 例によって『非アクティブモンスター』は、どうでもいいのだが、『アクティブモンスター』は、向こうから襲いかかってくるので、逃げ回るしか無い。



「しっかし、この世界だと『遠くまで見える』から、は助かるなぁ」

「そうですねぇ」

 『危険な街道』で話していた様に、『日中であれば100mほど先まで見える』ので、見晴らしの良い平原、草原(&花畑)等では、戦闘を避けるのは容易である。『アクティブモンスター』を迂回うかいして、[夢の洞窟]のある西(←)の岩山へと進んでいく。


 出会いの街[ヘアルツ]の南の『石壁』も、しばらく西まで続いている。

 これも同じく「かつて街を西(←)に拡張しよう としていた時の残骸ざんがい」…とかいう設定で、西の『岩山』付近まで続いている。

 このため『南口2』方面と、『西口1』方面で生息モンスターに違いが出るわけだが、やはり岩山付近で行き来出来るため、低LV時はには近寄らない方が賢明である。


(岩山  ━━━┻━━━南門2━━━╋━━━南門1━━━┛ ←大体こんなイメージです)



 南門2を出てからは、しばらく石壁にそう形で西(←)に進み、石壁の『切れ目』付近を、一旦大きく南(↓)に避けてから、また北(↑)に進み岩山へ向かう。[夢の洞窟]は、岩山のふもとの『ほぼ中間地点』の『南側』辺りにある。

 最初に探索するのは[盗賊のアジト]か[夢の洞窟]、と考えていた通り、街からは それほど離れていない、程良い立地のダンジョンである。



「……着いたな」

「……あぁ」

「……そうですね」

 ほどなくして俺達3人は、”夢”があふれている[夢の洞窟]入り口の手前に到着した。視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)AM 11:16>と表示されていた。



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LV:12(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:4,961G

武器:なし

防具:布の服

所持品:10/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2



万能抗原体[オールマイティーワクチン] あらゆる状態異常、病原体への抵抗力をあげ予防する。万能だが過信は禁物、感染してからは効果が無い。


※実は、『状態異常』に対して『抵抗失敗』や、『感染の判定』が出た場合に、『90%の確率で強制的に回避する』という結構『強力な効果』なのだが、「何度回避しても運悪く元の”感染などの判定”が出まくる」、「運悪く10%に当たる」等で、プレイヤーにとってみれば「食らう時は食らう」ため、『気休め』呼ばわりされている不憫ふびんなスキルである。



「……ご主人さま~」

「どうした?」

「あれ…はいるの~?」

「あぁ」

「う~…」

「寝ていていいから」

「み…みてる~」

「そうか、無理はするな」

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