第77話 南野、坂を登りはじめる?

 Sさんといっしょにカラオケに行きました。

 とうぜん、G嬢を指名し、飲んで歌って盛り上がります。


 そろそろ言っておくか。


 今日ここに来た目的は遊びほうけることだけではありません。私はG嬢に言いました。


「じつは次の現場、セブなんだよね。だから、しばらくはこれなくなる」

「ええーっ!」

 彼女はちょっと不満気な顔で、「うそでしょ?」という。


「いや、ほんとなんだ」

「なんで、南野さんが行くのよ?」


「いや、誰でもできる仕事でもないし」(調子こいてます)

「なんで?」


「新天地での仕事だからね。仕事できるやつじゃないと」(調子こきまくってます)

「他の人じゃだめなの?」


「だめなんだよ、俺じゃなきゃ」(すみません。調子に乗りすぎて絶好調です)


「ふ~ん。じゃあ、しょうがないね」

  

 でもじっさい今いるメンバーじゃ、私が適任なんだろうな。まさかSさんが行くわけにもいかないし(彼はこっちの現場を見なくちゃいけません)。


「でもたまには帰ってくるんでしょ?」

「たぶん」

 じっさい、帰ってこなけやならない用事だってあるはずです。ていうか、たまには帰ってきたい。


「じゃあ、そのときは必ず寄ってよね。こなかったらしょうちしないんだから」


 すみません。盛りました。こんなツンデレ風にはしゃべってません。つうか、それを英語でいうにはどう言えばいいんでしょう?


 ……と、まあこんな感じで、新たな地、セブ島で仕事をすることになりました。

 日本人スタッフも、なじみのローカルメンバーもいない中、どうやって仕事を進めていけばいいのでしょう?

 まあ、なんとかしていくしかない。


 俺はようやく登りはじめたばかりだからな。 このはてしなく遠いフィリピン坂をよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る