第75話 南野セブへ行け! 日本人いねえけどな

 順調のようで、なにかと問題を抱えたこの現場、とりあえず進んでおります。

 ただ、まあ、最悪の場合でも、最後に若干、予算外の出費があるかもしれないという程度の問題で、現場の進行自体にはあまり影響はないので、深刻な問題ではありません。

 まあ、この現場もなんとか無事収まるだろうと思っていたころ、定例会議で支店長より、爆弾発言がありました。


「南野、おまえ、セブへ行け」

「へ?」


 セブはしょっちゅう行ってますが、……潜りに。


「今度、セブで現場やるんだよ。おまえが行け」

「……今の現場は?」

「新しいやつが来るから心配すんな」


 いや、その人をセブの現場にやればいいんじゃね?


「そいつは日本じゃ所長やってるけど、海外ははじめてだ。そんなのを、日本人誰もいないところへ送れんだろう?」


 日本人誰もいないところ?

 そういや、セブ支店なんて聞いたこともないな。


「え、いや、ちょっと……、ひょっとしてほんとに日本人他に誰もいないんですか?」


「心配するな。最初だけだ。今度新しく、日本から若いの来る予定だから、そいつつけてやる」

「ローカルスタッフは誰が?」

「その現場用に新しいやつ雇ったから」

「そいつ、仕事できるやつ?」

「たぶんな」


 え、いや、……ハードル高すぎねえ!


「だいじょうぶだ。おまえならできる!」


 ……ははは。


「心配すんな。俺やOもときどき行ってやるから」

 とSさん。


 潜りにくるだけじゃないだろうな?


 こうして私はしばらくはこっちで引き継ぎと、次の現場の段取りをしつつ、セブ行きを待つ身となりました。


 ……だいじょうぶか、俺?

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