第73話 ひょっとして問題山積みなんじゃ?

 くわしい経緯は覚えていませんが、じつはこの現場、基礎までは他の業者がやっていたのを、上屋だけうちが引き継ぐ感じで受けていました。

 まあ、基礎をやってた業者がバックれたか(あるいはつぶれたか)、使えないんで施主が首にしたかってところでしょう。


 まあ、そんなに頻繁にあることじゃありませんが、それほど特殊なケースでもありません。

 しかしこのことがいろいろ問題を生み出したことも確かなのです。


 土間コンの下の砕石敷きまでは前の業者が行っており、うちは土間のコンクリート打ちからです。

 いざ、コンクリートを打とうという段階になって、私はふと思いました。


「待てよ。土間コン下の砕石のレベルって合ってるんだよな?」


 レベル、つまり高さですが、これが設計より高いと、結果土間コンが薄くなります。逆に設計より低いとその分土間コンが厚くなるわけです。


「砕石のレベルが高い分にはいいけど(ほんとはよくない。土間コンが薄くなると強度が心配です)、低いときにはよけいにコンクリートくうよな。その分、誰が出すんだ?」


 かなり広い現場なので、1,2センチ低いだけでもそれなりの量のコンクリートを食います。


「調べてみましょう」

 エドの指示によって、うちのサーベーヤーたちが測量を開始しました。


 平均値をとると、案の定、砕石天端のレベルは設計レベルよりも低い。

 つまりよけいにコンクリートを食います。

 金額にしてどれくらいだったかは覚えていませんが、笑って済ませられるほどの金額じゃなかったはず。


「施主に交渉して、土間コンは実数精算にしてもらうとか」

 試しにエドに相談してみます。

「いやあ、無理でしょう、そんなこと」

「じゃあ、前の業者呼んできて、もう一回、砕石弾き直させる?」

「無理、無理」


 じゃあ、どうすんだよ? うち持ち?

 鉄骨階段のせいで、他の部分から予算削ったんで、余裕ないんじゃねえの?


「一応、施主には交渉してみます」

 エドの交渉がうまくいかなかった場合、どうするか?


 とりあえず、問題は先送りです。

 ……だいじょうぶか、この現場?

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