第69話 フィリピンの雨を舐めんなよ!
ちょっと前の話にも書きましたが、今度の工場、熱を使うので、屋根が急勾配の上、一番上に熱を逃がす換気口がついています。まあ、はっきりいって、熱がというか空気が逃げるようにつうつうになってます。
で、そっから雨が入らないのという話ですが、もちろん、空気は横から下に抜けるような構造になっていて、上には屋根がついています。
だから、雨なんか入りませんよ。
……そのはずでした。
またしても設計者出てこい! の展開ですが、正直これは、私も図面を見てまったく問題ないと思っていました。
ははは。……フィリピンの雨を舐めんなよ!
私の常識はしょせん日本国内限定の常識。
雨期のフィリピンのスコールは、日本じゃ台風に匹敵する大雨。短時間とはいえ、それがほぼ毎日。
屋根にあたってバウンドした雨が、換気口から中に入って、降り注いで来るではありませんか。
これ、マジ? うっそ~ん。と叫んでも、自然は容赦しません。
プロジェクト・インチャージのトトが聞いてきました。
「どうします、南野さん?」
「縦のスレートをかさ上げして、はねた雨が入りにくくするしかないんじゃないか? できる?」
ちょっとラフスケッチを描いてみる。
「ノープロブレム」
ほんとか? ほんとにだいじょうぶか?
結果的にはだいたいそのとおりの施工が完了。
また、屋根屋によけいな出費をさせてしまった。
っていうか、あれ払ったのかな?(なぜ俺が知らん? 忘れてるだけ?)
ただ、それでも完全には雨をシャッタアウトできませんでした。
もっとも完璧にそれをしようとすると、ふさぐしかない。そうすると当初の目的の熱を逃がすということができなくなってしまいます。
向こうの工場長に相談したところ、
「まあ、いいんじゃないの、ちょっとくらいなら。霧雨じゃ濡れて参ろう、みたいな」
(すみません、適当ぶっこいてます。まさか、そこまでお気楽じゃなかったですよね)
でも、暑い中作業している作業員はきっと大喜び。
……ほんとか?
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