第43話 南野、G嬢をデートに誘う その2

 日をあらためて、Sさんとカラオケ屋に行ったときの話です。

 G嬢が席を外したとき、Sさんご氏名の子が、私に言ってきました。

「南野さん、Gを誘ってあげて」

「いや、でも断られたし……」

「ちがうのよ」


 その子は、野暮天はだからだめなんだからとばかりにおののいた。


「一回目の誘いにあっさり乗っちゃ、はしたないでしょう?」

「は?」

「もう一回誘ってみて。オッケーだから」


 ウインクしてサムアップ(……は、してなかったよな、たぶん)。


 ちょっと待て。つまりはこういうことか?

 一回目の誘いに乗るのは、いかにもな軽い女。あたしはちがう。だから二回目もさそってほしい。

 だけど、へたれ南野は一回断られたらもう誘ってこない。

 だから、友達を通じて、プッシュしてきたと。


 おまえは、深窓の令嬢かっ!


 そうこうしているうちに、席に戻ってきたG嬢。

「今度、デートする?」

「うん」

 にっこり満面の笑み。


 おまえ、頼むから今後、つまらんかけひきとかするんじゃねえぞ!


「映画でも行く?」

「映画? ううん」

 あまり気が乗らない模様。

 なんでも映画は暗がりに乗じて、カップルがいちゃいちゃするところで、いやだそうな。


 どんだけお嬢様なんだよっ!


「じゃあ、食事でも」

「うん」


 ということで、休みの日にふたりで寿司食いに行きました。

 残念ながら、私はへたれ……いや、紳士なので、色っぽい話にはなりませんでした。


 ……いや、ほんと。

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