第6話 僕が守ったる
どこかで鼻をすする音がした。ふと横を見ると、母がいた。枕元に座って、僕を見ていた。そして母の瞳は涙に濡れていた。僕を見ながら泣いていたようだ。
「お母ちゃん」
「ごめん、起こしてしもたね」
「どないしたん?」
「ううん、何でもない。ちょっと坊の顔見たくなっただけや。心配せんと寝ぇ」
「うんわかった」
僕は再び眠りに落ちた。するとまたコロちゃんが僕の傍にやって来て僕に話しかけた。
「ご主人、お母様には会えましたか?」
「うん。でもな、お母ちゃん、泣いてた」
「それでご主人はどう思いましたか?」
「え、どおって……」
「悲しいと思いましたか?」
「うん、ちょっと悲しかったけど……」
「けど?」
「でも、僕がお母ちゃん、鬼から守ったるねんて思った」
「やっつけましたね」
「え?」
「淋しさ鬼」
それから一年が過ぎて、僕は幼稚園に通うようになった。うちにやって来た当初、純白だったコロちゃんは、今や白熊から灰色熊になっていた。耳は取れ、尻尾は千切れ、穴が開いて藁がはみ出し、見るも無残な姿になっていた。大人たちはなんとかコロちゃんを捨てようとあの手この手を使ったが、僕はどんなことがあってもコロちゃんを手放そうとはしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます