第6話 僕が守ったる

どこかで鼻をすする音がした。ふと横を見ると、母がいた。枕元に座って、僕を見ていた。そして母の瞳は涙に濡れていた。僕を見ながら泣いていたようだ。

「お母ちゃん」

「ごめん、起こしてしもたね」

「どないしたん?」

「ううん、何でもない。ちょっと坊の顔見たくなっただけや。心配せんと寝ぇ」

「うんわかった」

僕は再び眠りに落ちた。するとまたコロちゃんが僕の傍にやって来て僕に話しかけた。

「ご主人、お母様には会えましたか?」

「うん。でもな、お母ちゃん、泣いてた」

「それでご主人はどう思いましたか?」

「え、どおって……」

「悲しいと思いましたか?」

「うん、ちょっと悲しかったけど……」

「けど?」

「でも、僕がお母ちゃん、鬼から守ったるねんて思った」

「やっつけましたね」

「え?」

「淋しさ鬼」


それから一年が過ぎて、僕は幼稚園に通うようになった。うちにやって来た当初、純白だったコロちゃんは、今や白熊から灰色熊になっていた。耳は取れ、尻尾は千切れ、穴が開いて藁がはみ出し、見るも無残な姿になっていた。大人たちはなんとかコロちゃんを捨てようとあの手この手を使ったが、僕はどんなことがあってもコロちゃんを手放そうとはしなかった。

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