第25話 一号棟
そうしてたどり着いた一号棟。
残り時間は二十分。
目指すのは最上階で、残り階層は五階分。
普通に考えれば十分間に合う余裕があるのだが……、
二号棟と違って奇妙な静けさの満ちる建物内の様子をみて、これは一筋縄ではいかなそうだなと思った。
無茶な運用で故障した改造車と整備班たちを途中で置いて、佐座目達は階層を上っていく。
「えいっ」
「機械はほとんど見当たりませんね」
理沙が銀色の鞭を振るって、目の前のバケツ型の機械を破砕する。
その先で出会うのはどれも数体の防衛機械のみで、今までの苛烈な火力が嘘のようだった。
「ここには重要な物があるからな。へたに火力をもたせて、建物を倒壊させたら目も当てられない」
「そんな建物をエージェント達が壊すってどうなのよ」
理沙が言うのは、潰された一号棟の入り口の事だろう。
「文句はディエスに言ってくれ。仲間を守るために、好き勝手暴れてくれたからな。我々は当然反対したんだがな」
「仲間を? あいつが……ふぅん」
兄の話題が出て顔を曇らせると思いきや、理沙は思案気な表情を見せるだけだった。
「それって女?」
「よく分かったな」
「はぁ……なるほどね。それであの時声をかけてきたのが、そうなのね。ふーん」
何故だろう、僕には理沙さんが不機嫌そう見えるのだけど。原因が分からない。
そんなやり取りをしながらも六階、七階と進んでいき、そして九階へとたどり着いた。
残り十六分。
その階層が、最後の難関だ。
余分なものが一切取り払われたフロアにて、佐座目達の前にそれは立ちはだかる。
「我々はソウルブレイカーと呼んでいる。これこそがこの作戦最大の障害、前回撤退を余技なくされた要因、エージェント達の心意気を砕いた機械……、いや兵器だ」
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