第14話 これからのこと
組織に戻る途中で、さびれた街の中を歩いていると美玲に謝られた。
「その、すまなかったな。まさか別人だとは思わなかったんだ」
「いえ、気にしてないですよ」
「君はエージェントなのか」
「ええ、そうです」
僕の能力は見た目で判断できるものではないし、疑問に思うのも無理はないだろう。
彼女は、一般人を連れまわしているのではと危惧したのではないだろうか。
それはないか、銃器を躊躇なく扱える人間が一般人とは思えないし。
でもこんな世の中だから、皆以外にそういう技能を身につけていたりしているのだろうか。
「その物体の上手い使い方、説明書みたいなのが僕の能力、コネクトです」
「そうか、便利なものだな」
「そうとは限りませんよ。分かるのは使い方だけですから、実際に使ってみるまではやはり想像では補えませんし」
覚える要領が悪い人間だったら宝の持ち腐れだっただろう。例えば兄さんみたいな。たまに思うけど、テストがあるなら勉強すればいいのに、どうして赤点とってから後悔するのだろうか。自分には分からない。
「私が入った頃には、お前は組織にいなかった。実力はどの程度なんだ?」
「そこらのナイトメアに負けない程度には保証しますよ、トップレベルの実力を誇る水奈さんと引き分けたぐらいですから」
「水菜か、彼女の事も私の記憶にはないんだ」
それなら、参考にはならなかったか。
ずっと無言で歩いていたアルシェが、会話の切れ目に質問を挟む。
「それで君の本当の立場が明らかになったわけだけど、それでも僕たちに力を貸してくれるのかい?」
「それは、まあしますよ。まがりなりにもお世話になったんですし、今のままでは元の体に戻る手掛かりはまったくありませんしね」
「そうか、そうしてもらえると助かる。心苦しいところではあるが」
美玲はほっとしたような様子で、言葉を漏らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます