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「もしかして、美杉?」


声をかけられるまで、不覚にも、あたしは、隆也に気がつかなかった。



レジは美容院でも打っていたからと、コンビニでのアルバイトを舐めていたのだけれど、そこでのそれは、美容院の【精算するだけのレジ】とはまるで勝手が違い、研修中の名札をつけたあたしには、いちいちお客様の顔を確認する余裕などなかったのだ。




名前を呼ばれて、懐かしいその声(隆也の声はとても低くて優しい)に、あたしはゆっくりと顔をあげた。



目の前には、洗礼された【大人の男性】になったかつての恋人、古谷隆也が立っていた。

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