決勝戦終了

「本編はここまでです。それでは審査に入りましょうか! ……ちなみに普段はこのタイミングで他の方から感想を聞きますけど、今回はやりません。うっかり応援数の低いネタを推してしまったら、センスの無さがバレてしまいますからね」

「作中でサイトの新システムを気にするのはどうかと思う。それと今回レア度がついてたけど、あれは誰が決めた数値なんだ……」

「まぁそっちは気にしないでいいですよ、魔王様(レア度N)。ああいうのは、結構どうでもいい数値だったりしますからねー」

「いや、気にするから。せめて我のレア度が最低な理由だけ教えろ」


 側近達がテンション高く審査を始めようとした、その時。店の入口から何者かが入ってきた。

 店の客だろうか。入り口に「モノマネ乃為、貸切。立入禁止」と張り出していたのを読んでなかったのかもしれない。側近はすぐさま入ってきた者に対応しようと近づくが……。



「あ、いらっしゃいませ。申し訳ございませんが、今モノマネ大会をしているんです。開店までもう少しお待ちを……」

【おうおう、大層りっぱな店やないけ。じゃまするでぇ】

「あっ……。マザーコンピュータさん!?」


 なんとやってきたのは、側近もよく知っているマザーコンピュータであった。マザーコンピュータは魔王国の取立人として恐れられている。入店させたが最後、豊富な情報網を使って店側から罰金を取り立てていくのだ!


「おい、なんでコンピュータが関西弁なのだ。というか歩けるタイプだったの、お前」

【サハギンさんよぉ。あんさん、国の自治体にきちんと申請してへんらしいなぁ? 罰金の500万、きっちり払ってもらいまっせ?】


 マザーコンピュータは魔王の突っ込みを無視してサハギンに請求書を投げ渡す。


「なんだと……」


 サハギンは請求書へじっくりと目を通す。専門用語ばかりで理解しづらいが、要約すると「営業の許可取ってないだろ。金払え」と言う内容らしい。

 異世界で食品を扱うと、申請等の現実的な話題は事欠かないため度々問題に上がる。それをオマージュした展開であろう。


「え。我、きちんと申請してないところに働いてたの……?」

「いいえ、おやっさんは悪くありません! きっと何かの間違いですっ!」


 あきれる魔王を尻目に、側近は強気に反論し始める。だが、その言葉はマザーコンピュータの闘争心に火を付けた。


【うっせぇ!】

「っ!?」


 突如襲いかかるマザーコンピュータ。なんやかんやあって、側近は捕まった。


「ヘッヘッヘ。なんやかんやで捕まえてやったぜ」

「うぅ。なんやかんやで捕まってしまいました……」

「ああっ……! なんやかんやあって側近さんが人質に!」

「なんやかんやをきちんと描写しろ。手抜きか」



【ヘッヘッヘ、こいつは罰金の肩代わりにしたる。俺が連れ帰って海外に売ったるわ】

「そんなっ!」

【おぉっと、近づくんやないぞ? てめぇらが近づいたらこのナイフが側近の喉を貫くぜ?】


 マザーコンピュータは、にやにやと笑いながらナイフを側近の喉に突き立てた。


「完全にチンピラになってる……。なんで前回とキャラがこんなに違うんだ」

【スライムの兄貴が、テンプレのモノマネを上達できるようにOSをアップデートしてくれたんや。これからは関西のお笑い番組でよく出る借金取りやらヒョウ柄のおばちゃんやら、レパートリーが増えるでぇっ!】

「レパートリーがキャラ的にも世界観的にも合ってないぞ。なんでWEB小説じゃなくて関西に寄せたんだ」

【スライムの兄貴は『今回の茶番パートは料理物だから、途中でチンピラに営業妨害させたらテンプレっぽいかも。と言う訳でお前チンピラやれ』って言うてたで】

「茶番のためだけにこんなアップデートを!? 我の部下、努力の方向がおかしいやつしかいないな……っ!」

「ちなみにその話を聞いた私は『異世界だと関西弁は不自然だから、悪徳貴族の方がメジャーなんじゃ?』って提案したんです。そしたらスライムさんが『確かにそうだな。書籍化したら直す』って答えました」

「すぐ直せよ。めんどくさがりのWEB出身作家かよ。そもそも何の書籍化を狙ってんだよ」


さて、大ピンチとなった側近。しかしここで救いの手が現れる。最強の邪神であり、最もカッコいい主役。すなわち我が輩だ。我が輩は華麗に鍵括弧を装備し、台詞を発した。


『グガハハハ。どうしたのだ、マザコンよ』

【じゃ、邪神様っ!? どうしてここに!】

「ま~たインプが臆面もなく表舞台に出てきやがった。しかも略称がひっどい」


 魔王が無礼な突っ込みをしてきたが、気にしない。我が輩の今の役目は、この争いを取り仕切る事だ。


『ここは我が輩の贔屓にしている店でな。して、貴様はなぜここにおる?』

【邪神様、ここは違法な店なんすよ! うちは、ちゃんと法に乗っ取って来とります。罰金は正当な権利でっせ!】

「……うちはそんな卑怯な店じゃない。きっとそちらさんの間違いだ」

『ふむ、双方の意見が食い違っているわけか……』


複雑な状況であった。ここで素晴らしい判決を下さねば、先ほどの感想モノマネみたいな形式で批判されてしまう。

だがそこは我が輩の腕の見せ所。我が輩はカッコよく華麗に判断を示す!


『ならばモノマネの結果発表で真実を見定めよう!もし結果発表のモノマネが極上であったならば、この店は無罪放免だ。だがつまらなかったならば、マザコンの言う通りに罰金を支払わせよう』

【へっ、さっすが邪神様。話が分かりまんがな!】

「いや、そのストーリー展開はおかしい。そんなんで解決できないだろ。もっと良い落とし所あっただろ」

『古来より、料理小説では敵にうまい料理を食べさせてねじ伏せるのがテンプレだ。ならばこのモノマネ大会もそれに乗っ取るべきであろう』

「モノマネで心が掌握できるほど世の中軽くないっ……!」

『さぁ、大将よ。とっとと結果発表へ移るのだ。そいつに極上のモノマネを見せるがいいっ!』

「かしこまりました」

【けっ、やれるもんならやってみいやぁ!】


 こうして店の営業権を賭けた、結果発表対決が始まった……!



「はい。と言う訳で結果発表行きまーす」

「……なんなの。なんで最近のトークパートは変なストーリーばっかなの。馬鹿なの?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る