総評

「……以上、受賞者の皆さんでした! 審査委員長の魔王様、受賞者に対する感想をお願いします」

「うむ、まずゴブリンはまだ方向性の見えない一発目のネタからとてもパンチがあるネタに仕上げたのは見事だった。以降のネタも順当な質を保ってたため受賞に至ったが、順当すぎてやや埋もれがちだったから三位とした」

「なるほど。一位は逃がしたとは言え、下級モンスターのゴブリンが魔王様に認められたのは新時代の幕開けを感じますね。これからは様々な下級モンスターが大会に参加してくるかも知れません」

「スライムとかコボルトとか、現時点で十分出てると思うぞ。で、二位は大いに悩んだもののヴァンパイアに賞を与えた。やや闇が濃いのでインプ同様除外するか迷ったが……まぁこのくらいならギリギリ大丈夫だろう」

「流石高貴なる闇の一族。インプのようにコントロールしづらい闇ではなく程よい闇を出しましたねー」

「こういう闇を出した時点で高貴ではないと思うがな。そして一位のドラゴンだが……何と言うか、ドラゴンの口からあんなくだらないネタ出るのは反則だと思う」

「本人は口から炎吐けるってのに火炎音を言葉だけで表現する姿は、ある意味凄かったですね」

「ネタの内容ではなく、ネタをやる者が違うだけで面白さが変わると気づかされた。それだけで彼は文句なしの優勝だ」

「ドラゴンさん、おめでとうございます! 後ほど優勝賞金の方をお送りしますので期待して待っててくださいね!」

「それでは、この『人と魔族の行動に関する研究発表会』もいよいよ終わりだ。本当に色々な行動パターンが知れて、視野が広がったような感覚さえある」

「そうですね。なんなら第二回大会でもやってみますか?」

「ふむ、いいな。もし魔物達がネタを揃えられる時が来たら、また新たな行動パターンを見せてもらうとしよう。ま、本当にできるかどうかは分からんがな」

「その時は魔王様もお手本を見せてくださいね!」

「まぁ、考えておこう。それではこれを持って、『人と魔族の行動に関する研究発表会』は終了とする!」

「……あ、待ってください。まだネタをやりたい奴がいるようですよ」

「何っ? いったいどこのどいつだ、終わりムードをぶち壊そうとする無礼者は」

「ゾンビです。超能力小説の紹介文ネタをやった彼がどうしてもネタをやりたい、と言ってます」

「ゾンビ? そう言えばあいつ、二回戦に出てなかったな。一回戦だけでネタ切れしたかと思ったが……」

「いえ、二回戦用のネタはあったようです。でもどうせなら終了宣言した後のエンディングにやりたい! と言う事で二回戦は見送ったそうです」

「だがなぁ……。奴だけを特別扱いにするのはどうかと思うしな……」

「でも魔王様も『見たい!』枠が欲しいって言ってたじゃないですか。他に新ネタ用意してた者もいませんし、そういう枠扱いで見てみましょう」

「……確かにボーナストラックとして考えればお得感もあるな。よし、エンディングは奴に任せるぞ」

「それでは最後のネタと共にお別れしましょう! 皆さん、ここまでお付き合いありがとうございましたー!」

「さてと、打ち上げはどこの居酒屋でやるべきか……。側近よ、どこか行きたい場所はあるか?」

「海の近くなのに魚料理出さないような期待外れの店じゃなければどこでもいいですよー」

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