第86話:回りくどい描写とは?

 ここまで読んできて、「やっぱり描写は回りくどい」と思った人もいることでしょう。

 もう少し具体例を見たいと思います。



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例文1

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 目の前に、五メートルはありそうな荒縄があった。

 僕はそれで輪を作り、首にかける。

 首を一周する輪は、まるで僕を逃がさない意思表示のようだ。

 そして、僕の肌を傷つけたくて仕方がないように刺激する。

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例文2

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 僕の瞳に、荒縄が写った。伸ばせば、二階の部屋から地面に余裕でつくぐらいの長さがある。

 僕はそれで、死ぬための形を作る。

 首を一周する輪は、まるで僕を逃がさない意思表示のようだ。

 そして、僕の肌を傷つけたくて仕方がないように刺激する。

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 例文2は、例文1の最初の2行を適当に描写化した物です。

 例文1はまだしも、例文2はさすがにうざく感じた人もいるかもしれません。


 私はこのように、描写が回りくどいと感じてしまうのは、2つのポイントがあると思います。


・想像が直接的ではない。

・描写文が多すぎる。


 この2点です。


 たとえば、2行目。

 「死ぬための形」というのが出てきます。

 これはすぐに想像できる内容ではありません。

 3行目で、その形がわかると思いますが、具体性のない描写で、具体性のない描写を補うという非常に回りくどい形になっていることがわかります。

 これが一概に悪いとは言いません。

 雰囲気作りというのもあるかもしれません。

 しかし、安易にやると「回りくどい」となるわけです。


 そして、これを繰りかえし、具体性のある説明文が少ない小説になると、回りくどさが大爆発となるわけです。

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