第25話「ロック鳥を育てよう②」
S級ランク魔物。
それが人の定めたロック鳥のランクらしい。
この世界にはSS級からF級まで魔物の危険度によってランクが定められているらしい。
ちなみに危険度とは別に魔物価値というランクもありこれも同じくSS級からF級まであるっぽい。
で、その中でもロック鳥の危険度・価値は両方ともSランク。
これは一級の冒険者が連合チームを組んでようやく倒せるほどのレベルであり、世界的に英雄と呼ばれた人物でもこれを仕留めるのは難しいらしい。
で、そんなすごい鳥の雛が今まさにオレの頭の上でくつろいでる。めっちゃ重い。
「けど、そんなにすごい魔物なら手懐ければオレかなり有名にならない?」
「だから有名になったら危険だって。ドラちゃんの時のこと忘れたの? ロック鳥の肉は世界七大美食のひとつに数えられて雛であってもそれは変わらないのよ」
マジかよ。食べてみたいけど食べられねぇ。
ということはここにロック鳥の雛がいるとわかったらまたゴロツキ冒険者が押しかけてくるわけ?
うーん、それは確かに面倒だわ。
「それにもう一つ気がかりもありますわ」
と今度は珍しくまともな雰囲気でフィティスが口を開く。
「餌をどうするか、ですわ」
「餌?」
「ロック鳥のことはアンタも少しは知ってるんでしょう? 今はともかくそいつ成長したら象を一掴みにするほど巨大になるのよ。とてもじゃないけど成熟したあとのロック鳥は人の手で養える限界を超えるわよ」
た、確か! さすがのオレも象をまるごと食べるほどのペットは許容範囲を超える!
「そうだな……。じゃあ、とりあえず大人になるまでここで面倒見て、飛び立てるようになったらこいつを離すってのはどうかな?」
「ま、それが妥当だと思うわよ」
オレの意見に頷くリリィ。当のロック鳥はそんなことなど露知らずオレの頭の上でスヤスヤと眠っている。
いつかは別れる運命だからあまり感情移入しないようにしておこう、とその時はそう思った。
というわけでひと月以上経ったけど、感情移入しないとか無理だね!
バリバリ可愛がったよ!
朝起きるとドラちゃんやジャック達と一緒にオレの布団の上や中で眠ってるし、おかげで起きると周りが白い羽毛だらけ。
畑仕事してても後ろからヒヨコのようについてくる。
採れた魔物のいくつかをヒョイっと投げるとパクリと食べてくれる。
名前呼ぶと返事する。
これで感情移入するなってほうが無理だね!
というわけで大きさもオレの胸くらいまで育ってそろそろ乗れそう。
そんなこと思ってるとジャックをボール替わりに追いかけるロックの姿が。仲いいなー。
そんな風に完全に魔物暮らしに馴染んていた頃、変化は突然やってきた。
――コンコン。
それは扉をたたく音。
おかしいな。リリィなら叩かずに普通に中に入ってくるしミナちゃんにはこの間食材を渡したばかり。
雪の魔女ことイースちゃんもたまに庭先で育っているドリアードのドリちゃんに会いに来るけど、わざわざノックしてこの家の中に入ってきたりはしない。
そう考えると珍客か?
いや、まさか、ついに来たのか! ゴロツキ冒険者?!
くそ、とうとうロック鳥の雛がいると嗅ぎつけやがったか!
確かに最近育ちすぎて目立ってきたし、今じゃオレよりも背丈大きいからな。バレるのも時間の問題だったか。
オレはそう思い、隣にいるフィティスに目で合図を送る。
いつでも反撃に移れるよう頼み、フィティスもそれを察してか頷き、静かにオレの背後に回る。
オレは恐る恐る扉を開くが、その先にいたのは全く予想外の人物。
「はじめまして」
白い。真っ白な人物だった。
天使。そう思ってもいいほど全身を白い衣服で包み、髪も肌も真っ白な綺麗な人物だった。
おそらくは男だろうが、同じ男のオレでも見た瞬間あまりの美しさに立ち尽くしてしまった。
「お会いできて光栄だ。以前から見てはいたのだが、こうして訪れる機会はなかったからな」
その人物はまるで旧知の友人のようにオレを見て優しげに話しかける。
そのあまりの自然な態度に飲まれるようにその人物が中に入るのを呆然と見てしまった。
やがて、その人物が部屋の端で眠っているロックを見かけると優しげに微笑み、オレの方へと振り返り予想外の言葉をかけた。
「お迎えに上がった。どうか私と共にこの世界の女神の元へお越し頂きたい。異世界からの訪問者ヒムロ=キョウジ」
それはこの世界ではオレ以外知るはずのないオレの秘密そのものであった。
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