わたしにネトゲを教えなさい!
雨夜
●1. わたしにネトゲを教えなさい!
「わたしにネトゲを教えなさい!」
と、同じクラスの美少女、
――さて、まずは状況を整理しようと思う。
ここは俺たちの通っている高校ではない。高校から少し離れたところにある、近所では大きめの本屋だ。俺こと
そして、なんという偶然か、そのお目当てにまったく同時に手を伸ばした相手こそが堀川心で、指の当たった相手がクラスメイトの俺だと気づいた途端、冒頭の台詞を曰ったのだった。
「……ええと?」
俺がようやく出せた声は、質問にもなっていないような一言ばかりだ。
堀川心は細く整えられた眉毛を顰めて、溜め息を吐く。
「だから……ネットゲーム。きみ、そういうの得意なんでしょ? いつも教室で、そういう話をしているじゃない」
「まあ、そうだけど……」
それは事実だ。
俺のクラス内での立ち位置は、いわゆるオタク
対して、堀川心はといえば……たぶん、
じつのところ、いまのいままで目を合わせたことすらない間柄だし、女子社会の機微に詳しいわけでもないから断言はできないが、少なくともこうして記憶を掘り返してみるかぎり、俺は堀川心が友人と歓談しているところを見たことがないように思う。
ただし言っておくが、堀川心はけして、根暗そうだったり、鈍くさそうな見た目をしているわけではない。というか、そういう日陰が好きそうな女子連中だって、似たもの同士で集まってお昼を食べたりしている。
言いたいのはつまり、冒頭でも述べたことだが、堀川心は美少女だった。はっきりとした目鼻立ちに、身長百六十五センチほどのすらっとしたモデル体型で、肩に被った黒髪はいつも艶めいていて……とにかく華やかな美少女なのだ。
立てば芍薬なんて言い回しがあるけれど、堀川心はまさにそれだった。
そんな彼女が、どうしてクラス内に友達がいないのか――それは正直、俺にはさっぱり分からない。クラスには堀川以外にも派手系女子が何名かいて、そういえば四月の頃は、彼女らが堀川に話しかけている場面を何度か目にしたような気もするが、四月末からの連休を迎える前には、堀川はいまのぼっちな立ち位置に収まっていたように思う。
だかしかし、まさに高嶺の花である堀川が余人を寄せ付けないのは、ある意味においてまったく自然なことなのだ――と納得してしまえるほど、彼女はいつも凜としていた。
……目を合わせたことすらなくとも、堀川は同じ教室内にいる美少女なのだ。
三次元より二次元に傾倒しがちな俺だって、健全な男子諸君のご多分に漏れず、視界の端っこに彼女を見つけると、ついつい見てしまうことだってある。だから、いきなり彼女について脳内で熱弁を振るってしまったとしても、これはもう生理的に仕方ないことなのだ。どうかご理解いただきたい。
ともあれ、堀川心はそういう孤高の美少女で、対する俺はどこにでもいるオタク男子だ。彼女から話しかけられることがあろうとは想像したこともなかった。まして、校内ではなく、放課後の本屋で――ネトゲの完全攻略本なるものに手を伸ばしたときに話しかけられる日が来ようとは、実際にそんな椿事が起こったいまでも、まだ信じられなかった。
本屋の店内で長々と話し合うのも憚られ、俺と堀川は近くのファミレスに場所を移した。
なお、二人でファミレスに行こうというのを提案したのは俺ではなく、堀川のほうだ。
身なりに自信のない十人並みのオタである俺に、ただ歩いているだけで人目を集めるような美少女をファミレスに誘う度胸はない。ひとつのテーブルを挟んで座っている現状ですら、腋に掻いた汗がばれやしないかと気が気じゃないくらいだ。
よく、舞い上がってしまう、という言い回しをするけれど、あれはじつに的を射たものだった。いまにも魂が口から抜け出し、どこかに飛んでいってしまいそうな心持ちだった。
俺が必死に動揺を隠しているうちにも、堀川はドリンクバーを二人分注文していた。
店員が下がったところで、堀川はこほんと小さく咳払いをする。
「……さっきは我ながら唐突すぎたと思う。いきなり変なことを言ってしまって、申し訳なかったわ」
「いや……まあ、うん。びっくりした」
「順を追って説明しようと思うのだけど……」
堀川は言葉を探すように目を泳がせた後、覚悟を決めるように息を吸い込み、言った。
「皆本くん、分かるよね」
「え……同じクラスの?」
「そう。同じクラスの
堀川は顔をぼわっと赤くさせて、たどたどしくも言い切った。
その告白を、俺は意外に思わなかった。いや、もう少し正確に言うならば――聞いた瞬間に一切の思考がぶっ飛んで、頭が真っ白になってしまっていた。
「え、え、っと……皆本融って、うちのクラスの……あの、ネトゲオタの……か?」
「そうよ」
俺の言い方に馬鹿にするような響きを感じたからか、堀川は柳眉を顰めながら頷いた。
俺や堀川と同じ、倉山高校一年一組のクラスメイトである皆本融を一言で言い表すのならば、ネトゲ愛好家、だ。別の言い方をするのなら、ネトゲ中毒だ。ネトゲオタだ。
俺だって世間一般から見れば十分なオタクだが、同じオタクだからこそ、俺たちは自分と皆本との間に越えられないレベル差があることを知っていた。
たとえば俺たちは、休み時間に集まって話すときも、一番隅っこに近い席に座っているやつのところに集まって話すようにしている。示し合わせたわけではなく、自然とそうするようになったのだ。教室の隅のほうで、他の皆様方のお邪魔をしないように気を遣いつつ、昨日のアニメがどうだとか、このゲームは良かった悪かっただとか話すようにしていた。
ところが、皆本融は違う。良く言えば、堂々としていた。自分の趣味を隠そうとしなかった。それはつまり、悪く言うなら、空気をまったく読まないということだった。
皆本融は教室の真ん中に位置する自分の机に、堂々とゲーム雑誌を広げる。何かのゲームとコラボしているらしい、アニメ調の絵が描かれたパッケージの菓子や飲料を平然と飲み食いする。あと、これまたゲームのものらしきイラストが入ったクリアファイルを普通に使っている。
そのあまりにも明け透けな生き様は、教室の隅っこでこそこそ話すのがやっとの俺たち小物オタにとっては、あまりも眩しすぎた。眩しすぎて、なんとなく距離を取ってしまっていた。
語弊のある言い方かもしれないが、皆本融はオタすら慄くオタ中のオタ。生粋のネトゲオタなのだ。
まあ確かに、見てくれはけして悪くないのではなかろうかと思わなくもないが、それでも良くて十人並みだ。まさに高嶺の花として、誰の手も届かない頂で咲き誇っている美少女が好きになるような要素が、皆元融のどこにあるというのか――いや、あるまい。
ところが実際、現にこうして、堀川心は頬をピンクに染め、
「好きなの。わたし、皆元くんのことが――好きなの」
真っ向から俺の目を見て、宣言するように言い切った。
俺は、瞬きすることはおろか、目を逸らすことも忘れて、しばし呆然としていた。だが、ようやっと、真っ白になって停止していた頭に血が巡り始める。
「あいつのどこが好きなのか、教えてもらっていいか?」
そう訊ねた途端、
「えっ……え、えぇ……い、言うの? 言わなきゃ駄目なの!?」
堀川の顔は――ただでさえ赤らんでいた顔は、さらに紅潮していった。頬と額からいまにも湯気が立ちそうな赤らみように、俺のほうがぎょっとしてしまった。
「ああっ、分かった! 言わなくてもいいから、ちょっと落ち着いてくれ! そんな顔されたら、こっちのほうがどうにかなっちゃうから!」
「そ、そうね。ごめんなさい、取り乱したわ……」
「そうだ。飲み物を淹れてくるよ。堀川さん、何がいい?」
「あ……じゃあ、コーヒーをアイスで。砂糖とミルクは要らないから」
「了解」
俺はそそくさ席を立ち、アイスコーヒーを二人分淹れてきた。ドリンクコーナーに長居したわけではなかったけれど、間を空けたことで俺も少しは落ち着けた。堀川のほうも、俺が席を立っている間に一息入れることができたようだった。
「おまたせ。どうぞ」
「ありがとう」
堀川はまだほんのり赤らんでいる頬を冷ますように、アイスコーヒーをさっそく半分ほど飲んだ。俺もそれに倣って、コーヒーの苦みと冷たさで頭を落ち着かせた。
「……さて、」
あまり沈黙が長くなっても嫌なので、俺のほうから会話を再開させる。
「堀川さんが皆元を、その、す……好きなのは分かった。で、それがどうして、俺にネトゲを教えてくれってことになるん……ですか?」
「べつに敬語は要らないわ。クラスメイトなんだから」
「いや――まあ、うん。分かってる。いまのは何というか……緊張のせいだ」
「緊張? ……ああ、そうね。わたしみたいなのに、いきなり声をかけられたんだもん。警戒して当然よね」
「ん……なんかちょっと違う。女子といきなり二人ファミレスという時点で、キャパオーバーなんだ。正直いまも、自分が何を言っているのかちょっと自信ない。というか俺、ちゃんと喋れてる?」
平静を装うことすらできない以上、俺にはこうやってありのままの心中を告白するしか手がなかった。どう頑張ってもボロが出るのなら、最初からボロを掲げて、文字通りに白旗を振るほうが賢かろう。
ふと見ると、堀川は豆が鳩鉄砲を食らったような顔になっていた。
「……そっか。わたしだけじゃなかったんだ」
堀川は安堵の溜め息を漏らすと、俺を見やって頬笑んだ。
「わたしだって、男子と二人でファミレスなんて始めてよ。緊張してるよ。だから、良かった。緊張しているのがわたしだけじゃなくて。……あ、女子と二人で、というのも経験ないけれどね」
最後に言わずもがななことまで付け加えて頬笑む堀川は、もう本当に可愛かった。
こんな可愛い女子が一体どうして、べつに勉強ができるでもスポーツが得意なわけでもない皆本融に惚れたのだろうか? 聞かないと決めたから追求はしないけれど、じつに気になる。
「あ――わたしがどうして、山野くんにネットゲームを教えて欲しいのか、だったよね」
「うん」
「理由は単純。皆元くんの歓心を買いたいからだよ」
堀川はそういうと、先ほど買った本を机に置いた。とあるネトゲの完全攻略本だ。
結局、あのときの本を彼女は買っていたのだった。同じものがまだ何冊か積まれていたけれど、俺は何となく、買わずじまいだった。
「この本ね、皆元くんも学校で読んでいたの。彼が何を読んでいるのか知りたくて、わたし、わざわざ皆元くんの机の横を通ってお手洗いに行ったりして確認したから間違いない……って、それはいいのよ。とにかく、皆元くんはどうやら、このネトゲがお気に入りみたいなの。少し前までは、このネトゲの特集が組まれた雑誌を読んでいたし、スマホでこのネトゲの攻略サイトっていうの? そういうのを見ていたこともあったから間違いないわ」
断言した堀川の顔は少し自慢げだ。
彼女はいま、昨日今日の話ではなく、日常的に皆元が読んでいるものを監視していましたという告白をしたわけだが、そのことに気づいていないのか、はたまた、べつに隠すまでもない普通のことだと思っているのか――。
「……まあ、細かいことはいいや。それで堀川さんは、そのネトゲを皆元と一緒にやりたい、というわけだ」
「うん、そうよ」
「だったら、俺じゃなくて皆元に教えてくださいって言えばいいじゃないか? そのほうが手っ取り早いと思うんだが」
「それも考えたけれど、たぶん拒否されるかな、って」
堀川は小さく苦笑いして、だってほら、と続ける。
「わたしが皆元くんに、このゲームに興味があるから良かったら教えてくれませんか、と言ったとするじゃない? そうしたら皆元くんはきっと、こう言うわ。――本当に興味があるのなら、とっくにやり始めているはずだ。自分で始めもせずにいきなり他力本願なのは、本当は興味がないからだ。だから教えないし、二度と話しかけるな――って」
皆元は声真似のつもりなのか、低い声音で言って、ふふっとおかしそうに笑んだ。その声真似が似ているのかどうか、俺には分からない。いま気がついたけれど、俺は皆元の声をほとんど知らなかった。話しかけたこともなければ、誰かと話しているのを聞いたこともなかった。授業中、教師に当てられて発言したのを聞いたことがあったかもしれない――くらいの記憶しかなかった。
由無し事を黙考していた俺に、
「だからね、」
と、堀川は完全攻略本に指先を落としながら言う。
「皆元くんに話しかける前に、まずは一人で始めてみようと思って、この本を買いにきたの。そうしたら山野くんと鉢合わせしたじゃない? そのとき、ぱって閃いたの。そうだ、山野くんもネットゲーム……ネトゲが得意そうだから、教えてもらったらいいじゃない――って」
堀川は胸の前で両手を合わせて、我ながら名案を思いついたものだ、と言わんばかりの顔をしていた。ネットゲームをわざわざネトゲと言い直して、得意顔をしてみせたりもした。
その表情も仕草もいちいち魅力的だったけれど、俺は彼女がどうにも勘違いしているらしいことを訂正しなくてはならなかった。
「堀川、ひとつ言っておくぞ」
「何?」
小首を傾げる堀川。
俺は堀川がまだ指先を乗せたままにしている攻略本の一部、ネトゲのタイトルが記された部分を遠くから指差して、はっきりと告げた。
「俺は確かにネトゲをプレイした経験もあるけれど、このタイトルは未プレイだ」
「……うん?」
上手く伝わらなかったらしい。言い直すことにする。
「他のネトゲをやったことはあるけれど、この【ザイフェルト・オンライン】というネトゲは触ったこともない。名前をどこかで見たことがあったかもしれないな、くらいのレベルだ。つまり、俺はこのネトゲに関して、堀川に教えてやれるような知識は持っていない」
「え……」
堀川の顔が、きょとん、の形で固まった。
たっぷり三秒は経ってから、はっと驚愕に目を見開き、捲し立ててくる。
「うそ!? だって、山野くんはオタクなんだよね? ゲームとかアニメとか何でも知っているんじゃないの!?」
「どんな偏見だよ! その理屈だと、読書家は絵本でも辞典でも何でも読み込んでないといけなくなるね!」
こういう反論の仕方は、自分でもすごくオタクっぽいと思うが……いくらオタクでも、いわゆるオタク的コンテンツの全てを網羅しているわけがなかった。
世の中にオタクという言葉が生まれて、そろそろ云十年。ネットゲームというものが生まれて十有余年。スマホのゲームアプリや、通信要素のある携帯ゲーム機用ソフトまで含めたら、それこそ星の数ほどのタイトルが存在している。その上で日々、新しいタイトルが発表されているのだから、
「あー、あれ有名だよね。知ってる知ってる。でも、なんでか縁がなくて、やってないんだよね。ほら、今度新しいのが出るっていうし、そっちをやりたいから時間がないよ。あれも有名だから一度はやってみたいんだけどさぁ」
なんて感じで、オタクだって、みんなが知っているような名作ゲームをやったことがないということは、希によくあることだ。
オタク的コンテンツだからと言って、オタクなら誰でも何でも知っていると思うほうがおかしいのだ。
……って、だから、こういう言葉を捻くりました言い訳の仕方がオタク臭いんだよもう。
自分の脳内を渦巻いた、いちいち勿体つけた言い訳に自分でツッコミを入れる俺。
そんな俺の内心をつゆ知らず、堀川は困惑の様子で眉を曇らせている。
「そうなんだ……うん、そうだよね。わたし、山野くんなら知っていて当然って勝手に思っていたけれど、当然なわけがないよね。偏見、だね。うん……ごめんなさい、色眼鏡で見ていました」
そう言うと、堀川はぺこりと頭を下げた。すると、耳にかかっていた黒髪がはらりと流れ落ちる。それが妙に色っぽくて、思わず喉が鳴ってしまった。
「……?」
その音が聞こえたのか何なのか、堀川が頭を垂れたまま、ちらっと上目遣いで俺を見てくる。俺は咄嗟にアイスコーヒーを呷って誤魔化した。
「い、いや。いいんだ。何でもない。べつに気にしてないし、本当にいいんだ」
「それなら、いいんだけど……」
堀川は語尾を引っ張るように濁しながら顔を上げると、そのまま今度は顎に手を添え、思案顔をする。
「……山野くん、他のネットゲーム……ネトゲは経験があるのよね?」
「まあ、多少は」
幸か不幸か、ドハマリしたものはないけれど、基本無料のものや無料期間のあるタイトルをいくつか遊んでみたことはある。
どれも楽しいとは思ったけれど、不思議と続かなかったのは、ソロプレイしかしてこなかったからだろうか?
「多少か……でも、多少でも経験があるのなら、間違いなくわたしよりネトゲの知識があるということだよね。だったら、うん――やっぱりお願いするわ。お願い、山野くん。わたしにネトゲを教えて。少なくとも、皆元くんとネトゲの話で盛り上がれるくらいに上達するまで、わたしにネトゲを教えてください」
堀川はそう言って、さっきよりも深々と頭を下げた。肩にかかった黒髪がさらりと流れ落ちる様は、やっぱりきれいだった。
だからなのか、俺はついつい、言っていた。
「まあ……俺も【ザイフェルト・オンライン】には興味があったから、完全攻略本なんてものに手を伸ばしたわけだし。どうせお試しで始めてみるつもりだったのは確かだから、まあ……教えるとはとても言えないけれど、一緒にやってみるってレベルでよければ――いいよ」
どうしてこう無駄に前置きを重ねるのかと自分で恥ずかしくなりながらも、とにかく俺はそう言っていた。
途端、堀川の顔はぱぁっと明るくなる。
「いいの!? 山野くん、ありがとう! 一人でするのは心細かったから本当に嬉しい、ありがとう!」
「うん、そうか……」
そういえば堀川って友達がいないんだったな、と思い出して、俺はちょっぴり悲しくなったけれど、かりに友達がいたとしても、一緒にネトゲをやりましょう、なんて誘える友達はいなかっただろう。ネトゲ好きを公言しても白い目で見られずに済むのは、俺たちみたいなオタク連中の仲間内でだけだ。
そういう意味では、周囲から白い目で見られていることに気づいてすらいない感のあるネトゲオタ、皆川融を好きになった堀川心という少女は、非オタにしては希有な存在なのではなかろうか。
それとも、じつは自室に大量のフィギュアや同人誌を隠し持っている隠れオタだったりするのだろうか――。
「山野くん、ええと……?」
うっかり本気で考え込んでいるうちに、俺は堀川のことを凝視していたらしい。堀川が戸惑った様子で小首を傾げていた。
「あっ……ごめん。いや、ネトゲを教えるって、まずは何から教えたものかと考えていたもので」
咄嗟に吐いたデマカセに、堀川は目を瞠らせた。デマカセがばれて怒られるのかと思いきや、
「早速、考えてくれていたんだ……ありがとう」
感激した様子でお礼を言われてしまった。
罪悪感がちくっと胸を刺す。
勢いで引き受けてしまったけれど、請け負った以上はできるだけ頑張ってみよう。堀川はゲーム自体ほとんど経験がないだろうから、まずは操作方法からだろうな。家に帰ったらウィキと公式サイトで確認しておこう。
「あ、考えてもらっているところで悪いんだけど、」
堀川がおずおず言ってくる。
「わたし、この……ザイフェルト・オンラインの公式サイト? というのをいちおう見てみたんだけど、よく分からないことがあって……」
「うん?」
「ゲームの始め方についてのところに、必要な動作環境というのが書いてあったのだけど……これは、パソコンでこのサイトが見られているのなら問題ありませんよ、で合っているんだよね?」
「……うん。まずはゲームが始められるか、からだったか」
操作方法を教えるまでには、まだしばらく時間がかかりそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます