第93話 野宿のお供に。

 ドライアドの小枝を麻紐で結んで枠を作りその中にさっきのイノシシとサイの間の魔物の皮を小さくした石を並べて中心に虹色の魔導石を入れた。

 それに範囲指定と魔物避け、悪意あるものを近づけないようにと魔言を刻んだ。


「それは…?」

「"結界"、起動!」

 キーワードで魔力を巡らせると、虹色の風が僕とカインさんのいる野宿してる範囲を取り囲んだ。

 地面から空までを円形に発動した結界はそのままでは目立つのですぐに無色の緩やかな風に変わる。

 想定通りに作れたようで満足していると、横からため息が聞こえた。

「また君は、凄いものを…」

「え?これでカインさんも一緒に寝て大丈夫ですよ?」

「…君は…いや、いいんだけどありがたいんだけど、ちょっとは自重しようね…?」

 それからこんこんとどれだけこの結界というものが稀少で貴重で影響力の大きなものかカインさんにさとされました。


 王族ですら結界なんて持ってないとか他国でも聞いたことがないとかあるいは神話級の魔道具であるとか…。

 世に出せばこれを巡って戦になりかねない、とか。

 うん、はい、門外不出決定です。

 有事の際でなければ、僕とカインさん専用ですねわかります。

 正座で明け方まで説教を受けて、結局数時間しか寝られなかったよ…。

 せっかくカインさんも寝られるかなって思って作ったけど逆効果にしてしまってごめんなさい。

 項垂れて反省した僕にカインさんは、苦笑して。

「…作ったものは活用しなきゃね」

 最後には頭を撫でてくれた。

 数時間だけどカインさんも一緒に寝られて、また余り人目がない野宿の時には使おうねって言ってくれてホッとした。


 朝、まだ眠い目を擦りながら野菜のスープを作る。

 小さめに切って火が通りやすいようにしてとろとろになるまで煮込み、そこに固めのパンを添える。

 ちぎって食べると歯応えがある黒パンだけど、スープに浸せば柔らかく野菜の旨味を吸って美味しい。

 出来上がりを待ってカインさんを起こそうと思ったけどカインさんは寝起きが良いみたい。

 振り替えったら声をかける前に目を覚ましてたカインさんと目が合ったよ。

「お、おはようございますカインさん。朝ごはんできてます」

「おはよう」

 日がのぼってだんだんまた暑さが戻って来るけど、あったかいご飯はそれだけでもありがたい。

 そう言ってカインさんは美味しそうにスープとパンをぺろりと平らげる。


 僕も一緒に食べてる間に上空から鳥系の魔物が襲ってきてたんだけど、結界に触れると興味を失くしたように何処かに飛び去る。

 上手く機能してるなあ、良かった。

 カインさんは感心半分呆れ半分で見上げていたけどね。

 ちなみにモリーとムササビっぽいムサビーはヘソ天で寝てたよ…、ご飯の匂いを嗅ぎ付けると鼻をひくひくさせて面白かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る