第82話 珍生物と共に往く。
今日は西に向かって移動だ。
珍しい乗り物に乗れますよと宿の女将さんに聞いたので、観光馬車で湖を見に隣町に行くんだ。
観光馬車の乗り場に行くと、大きな大きな動物が草を食んでいた。
「……………えっ、カピバラさん?」
「カプリバーラだじょ、乗るんけ?」
「ふぁっ、はい!」
馭者さんに声をかけられて頷いたけど、驚きはそのまま続く。
日本の動物園で見たカピバラなのに大きさが馬並みの、カプリバーラという動物。
穏やかで言うことを聞かせやすい性質なのでよく乗り物にされてるらしい。
特にこの街は草原で餌も豊富だから野生でも多く生息しているんだって。
「えっと、今日はよろしくね?」
今日はこの子のお世話になるんだなぁと思って首もとの辺りを撫でて挨拶をしたら、返事のつもりなのか僕を見て一声。
「ム゛ー」
「…アルパカ?」
カピバラに似てるのに鳴き声はアルパカって!
表面の毛は固めだけどその下はふわふわの毛で、じんわりとあったかい。
草原だから吹きっさらしだけどこれで寒さはしのげているのかな。
もしゃもしゃって撫でると気持ち良さそうに円らな目を細めてる。
不思議な動物だけど可愛いなあ。
「カプリバーラが可愛いのはわかるけどまた後でね。そろそろ行かないと次の街に着く前に日が暮れちゃうよ?」
「あっ、すみませんカインさん…」
「お昼休憩の時にまたのんびり撫でてあげるといい」
「はい!」
簡単に屋根をつけただけの荷車っぽいところに乗り込むと、ゆっくりカプリバーラが動き出す。
馭者さんがホーミーみたいな音で指示を出すと徐々にスピードが上がった。
でも観光馬車らしく景色を十分楽しめる早さだ。
ちょっと揺れるけど。
「…大丈夫?こっちにおいで」
「?」
手招きされて片足をたてて座ったカインさんの側に寄ると、腕を引かれて横にした膝に乗る形になった。
そのままお腹に腕が回り固定される。
あ、安全シート?
「こうすれば揺れも少ないだろ?」
「は、はい…ありがとうございます…」
「うん」
本当に揺れは少なくなって楽だけど、お膝抱っこでがっちり腰を抱えられてるのは恥ずかしかったです。
カインさんてばいい匂いするし…っ。
太陽が中天に差し掛かる頃にはカプリバーラ車は湖に着いていた。
ドキドキして景色はあんまり見てなかったよ…。
きらきらと陽射しに輝く湖面と野生の動物がゆっくり泳いでるのがよく見えるビュースポットに陣取り、腰を下ろす。
昼食は宿の女将さんに許可をもらって厨房の片隅で作らせてもらって、バスケットに入れてきたサンドイッチ弁当です。
材料は殆ど宿のものを貰ったのでその分のお代も払ったけどね。
鳥っぽいお肉を甘辛く味付けしてキャベツっぽい野菜とテリヤキチキンサンド風に、ジャガイモっぽい木の実をポテサラみたいにマッシュして付け合わせにゆで卵(何かの魔物の卵…)も作った。
きれいな布で包んでおいたサンドイッチをカインさんに渡す。
「カインさん、どうぞ」
「ありがとう…これは、美味しそうだね。君が作った?」
「えへへ、故郷の味を再現してみました!」
「へぇ…いただくよ。ん、旨い!」
「良かった。俺もいただきます!」
卵と酢と油でマヨネーズもどきも頑張って作ってみたけど、割りと上手く出来たかな?
卵は魔物のだし油も日本のとは違うんだけど、酢はなんと米酢があったんだよ!
他国から輸入してるらしいけど、お米は王都にあるんだよね。
それも輸入なのかそれとも酢の別な原料が輸入?詳しい作り方を知らないからなあ。
その辺も楽しみだな。
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