第39話 鞄を買いに。

 改めて亜空間ポケットに荷物を収納したら、またカインさんの案内で街に出た。

 今度は靴と鞄を買いにだ。

 革を中心に扱ってる店らしい。


「オイッチャンいる?」

「ああー?まだおりゃあ昼寝という重要業務が、ってカインか」

 僕にはずいぶん高い天井なのに呼び掛けに答えた店主はいかにも狭そうにのそのそ出てきた。

「この子に靴と鞄を見繕ってくれ」

「あ?こりゃまたいやよくきたなボウズちょい待ちな」

 聞き逃せないキーワードにぎんと睨むとそ知らぬ振りでそそくさと引っ込む。

「…っとあったあった、このサイズならあー合うと思うぜ?はいてみな」

 すぐに戻ってきた店主の手には編み上げのブーツが二足あった。

「えーこいつは普段使う動きやすいもんでこっちのは竜毒や雨にも強いヤツさ」


「竜毒!?」

 そんな物にいき当たることなんてあるのかな!?とびびっていたらカインさんに頭をぽふんとされる。

 気安いのに柔らかい触り方がなんだか照れる。

 あ、これが巷に聞く撫でポですか。

「念のためにそれも買っておこう。後は鞄だ。出し入れしやすい斜めがけのものでどうかな」

「は、はい」

「…ふん?なるほど、ならこいつがオススメだな。魔獣の脱皮革が入ったんで作った特性鞄だ」

 その鞄は毛革なのかふさふさの手触りが実家に居る柴犬のナツコに似ていて即決した。

 容量も亜空間魔法で問題ないもんね!

「ありがとうございました」

「いんや。貴重なもんも見れたからなあカイン?」

「うるさいぞオイッチャン黙っておけよ」

「ハイハイ。ボウズよかったらご贔屓にしてくれな」


 革の店を出るとカインさんがちょっとだけ躊躇った後で僕にすすめてきたのは武器を持つことだった。

「武器…ですか」

 そりゃゲームとかなら嬉々として探しに行くけれど、実際に持つとなると怖いと思った。

「護衛としては必要ない方がいいが…万が一、一人になったとき魔法だけで対処できないこともあるから、ね」

 だけどカインさんの言うことに納得した。

 怖いけど、身を守るために。

「………わかりました。行きましょう」

 僕は武器と呼ばれるそれを手に取る覚悟をした。


 その覚悟はとても軽い物だったと思い知らされる事が起こるなど未だ気づかず。

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