No.2243.後10センチ

春風が 優しく 撫でてくれる

少しだけ 肌 涼しげな朝

同じ制服で 私が乗る次の駅

凛とした佇まいで 挨拶をくれる


長身だから 見上げるんだけど

目が合うと ドキドキが加速する

一人になると 何処か影があって

とても 物憂げな表情をしている


後10センチ 身長があれば

あの人の心に 触れられる

そんな気がした だから だから


秋風が 悲しく 触れてくれる

ほんのりと 陽が 弱まりつつも

冬の制服で あなたが乗る次の駅

何度一緒に二人で 通(カヨ)っただろうか


ゆっくり進む 車窓の景色も秋で

紅葉の木々 一枚の絵みたいだ

上背がある だから絵になるね

今日も 物憂げな表情をしている


後10センチ 身長があれば

あなたの心の闇 触れられる

そんな気がした だけど だけど


これが最後になるんだね

後10センチ 願っても 触れられなかった

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