No.1684.ステった

酷く緩慢な動きであたりを見渡してみたけども

人の気配はすれども誰もいない

そもそも この部屋に誰かがいる事がおかしいけど

ずたずたに切り裂かれた右足のアキレス腱

ひきずりながら立ち上がろうとして呻いて倒れた


バクバクうち続けている心臓を無理やり取り出して

天秤にかけてみても釣りあう事はない


雨の中耳元で囁く声に耳をすませてみても

聞き取る事も誰の声か判別する事すらも出来ない

ただ ひたすらびしょ濡れの体から温度が逃げてゆく


ぼそりとつぶやいたけど雨の音に掻き消されて

その声は誰かに聞こえる事もなく掻き消えた


吹き飛ばされて咳き込んで意識が飛んだ

何がおきたのかもわからず

ただ ひたすら 苦しくなってる


それでも足音すらも聞こえない

じっとねっとりとみられているのはわかるけど

それが一体何なのか理解出来ない


気力も体力も何もかもが失われてゆく

やがてこの体の反応さえも途切れていった

雨音だけが静かに寂しく奏でられている

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